2023 New Model ｜ CZAPEK
2023年チャペック新作　プラス・ヴァンドームコンプリシテハーモニー・ブルー

【編集顧問田中克幸ピックアップ】

　2023年11月5日開催の第10回「オンリーウォッチ」。その出品作の一般向け限定モデルが「プラス・ヴァンドームコンプリシテハーモニー・ブルー（Place Vendôme Complicité Harmony Blue）」。搭載ムーブメントは出品作と同じ手巻き式Cal.SXH8。チャペック8番目のムーブメントであり、アカデミー（AHCI）所属の独立時計師ベルンハルト・レーデラー氏との共作が話題となった。「ケ・デ・ベルク」と「プラス・ヴァンドーム」のメカニズムとデザインを進化させ、4-5時と7-8時にデュアル・エスケープメント、これらを接続するディファレンシャル・ギアが12時、また6時にはパワーリザーブ・インジケーターを装備する。世界限定50本。

Place Vendôme Complicité Harmony Blue
プラス・ヴァンドームコンプリシテハーモニー・ブルー
ケース径：41.8mm
ケース厚：13.3mm
ケース素材：18Kローズゴールド
防水性：5気圧
ストラップ：アリゲーター、18Kローズゴールド(5N)製フォールディング・バックル
ムーブメント：手巻き、Cal.SXH8(ベルンハルト・レーデラーとの共同開発)、約72時間パワーリザーブ、毎時21,600振動(3Hz)
仕様：時・分・秒表示、パワーリザーブ表示、12時位置にディファレンシャルギアを備えたオープンワークのダブル・エスケープメント、ガルバニック処理されたブルーダイアル
限定：世界限定50本
予価：19,800,000円(税込)

＞このモデルの関連記事はこちら

チャペックのファースト・コレクション「ケ・デ・ベルク」とセカンド・コレクション「プラス・ヴァンドーム」の進化系モデル、というアイデアを同社CEOのザビエル・デ・ロックモーレル氏が思い付いたのは2018年のこと。その発展型モデル「コンプリシテ（Complicité）」は、肯定的に捉えた“共謀、暗黙の了解”という意味のとおり、アカデミー（AHCI）所属の独立時計師ベルンハルト・レーデラー氏との共作によるムーブメントを搭載する。メカニズムとエクステリア（外装）が等しく美的であることが、デ・ロックモーレル氏の考える時計製造美学である。よって「プラス・ヴァンドーム」の12時位置の時分針はディファレンシャル・ギアに替わり、またパワーリザーブ計は6時位置に移動、さらに「ケ・デ・ベルク」の4-5時位置のパワーリザーブと曜日表示計、ならびに7-8時位置のスモールセコンドはそのままデュアル（ダブル）・エスケープメントに換装された。つまりダイアルは12時位置のディファレンシャル・ギアを中心に、これを取り囲むふたつのエスケープメントの輪列、さらに下方のデュアル・エスケープメントへと左右等しく流れる設計である。一方ディファレンシャル・ギアは、バットマンのマークに似た透明のサファイア製ブリッジで12時を中心に左右に支えられる。これは「垂直方向に対する左右の完璧なシンメトリー」というチャペックの時計製造哲学に従ったものだ。

独立時計師ベルンハルト・レーデラー氏との共作によるCal.SXH8は、チャペックでは8番目となるムーブメント。開発のきっかけはチャペックCEOのザビエル・デ・ロックモーレル氏のご子息と、レーデラー氏のお嬢さんがニューシャテルの学校での同級生だったこと。この偶然の出会いから誕生したCal.SXH8の困難な点は「メカニズムの主要部分をダイアル側に設置する」ことにあった。しかしこの試みはチャペックでは初の出来事ではない。彼らはすでに、2021年発表の自社初のモノプッシャー・スプリットセコンド・クロノグラフ「アンタークティック・ラトラパントシルバー・グレイ」搭載のCal.SXH6で、さらに2020年発表の初の自社ムーブメント、Cal.SXH5のメカニズムをダイアル側から視認できるように再構築したCal.SXH7（2023年3月発表の「アンタークティック・レヴェラシオン」に搭載）でも経験している。しかしテンプ等のパーツを天地（上下）逆さまの状態に置き換え、輪列等の駆動系を収めつつ、さらにこれらをダイアル側でシースルー化する作業にはかなりの苦労があったという。