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2023 New Model | GIRARD-PERREGAUX
2023年 ジラール・ペルゴ新作 ネオ コンスタント エスケープメント

【編集顧問 田中克幸 ピックアップ】

 2013年3月発表の「コンスタント・エスケープメント L.M.」。これは2008年にプロトタイプが発表された新型調速・脱進装置「コンスタント・エスケープメント」搭載モデルで、時計動力の伝達過程における動力ロスを抑え、定力化したエネルギーにより長時間の安定歩度を実現した初の量産型モデルだった。キイポイントはシリコン製ブレードとフレームで、その後10年の時を経て今回発表された新作「ネオ コンスタント エスケープメント(Neo Constant Escapement)」は、前作同様フォトリソグラフィーやDRIE(深部反応性イオンエッチング)技術によるシリコン製ブレードを進化。時分針等のデザインを変更しながら自社ムーブメントの手巻き式Cal.GP09200-1153を搭載し、再び我々の前に登場した。


ネオ コンスタント エスケープメント

NEO CONSTANT ESCAPEMENT
ネオ コンスタント エスケープメント
Ref:93510-21-1930-5CX
ケース径:45.0mm
ケース厚:14.8mm
ケース素材:チタン
防水性:30m(3気圧)
ストラップ:ブラックラバー(ファブリック仕上げ)、微調整機構付きチタン製トリプルフォールディングバックル
ムーブメント:手巻き、Cal.GP09200-1153、7日以上のパワーリザーブ、毎時21,600振動(3Hz)、29石
仕様: 時・分・秒表示、パワーリザーブ表示、サファイアクリスタルケースバック、無反射加工サファイアクリスタル「ボックス」風防、蓄光塗料(ブルーに発光)を塗布したサスペンデッドインデックスを備えたリング文字盤、COSC認定クロノメーター
予価:13,101,000円(税込)

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※価格は発表当時の情報になります。最新情報につきましては公式サイトをご確認ください。


「ネオ コンスタント エスケープメント」をダイアル側から見る。まず1-2時と10-11時には各々香箱が設置され、この7日間以上のパワーリザーブを生む二重香箱(デュアル・エスケープメント)から下方へ動力が伝達される。一番車(香箱)から順番に動力は伝達されるが、写真では秒針のカウンターウエイト(末端部分)左右中心部に5番車が新設され、この車を通して左右のふたつのガンギ車へと伝達する(ガンギ車には各々3個の歯が備わる)。動力はふたつのガンギ車から同時ではなく交互に伝達され、切替レバーを通して極細の湾曲したパープルカラーのブレードへと伝達される。リップ型の同色フレームがこのブレードを支えるので、ブレードは弓が上下にたわむような運動を繰り返す。ブレードは人間の髪の約6分の1の薄さ(14ミクロン。人間の髪の太さは平均50~90ミクロン)で、前記した安定運動が調速・脱進装置の定力化(コンスタントフォース)を生み出すという理論だ。2013年3月26日、スイス・チューリヒ郊外のホテルの発表会に運良く出席できた私は、このブレードの発想がひとりの時計職人からもたらされたものと聞いた。その人は列車の切符を、親指と他の指の間に挟んでいた時に思いついたそうである(おそらく切符の両端を親指と中指等ではさんで他の指で切符をはじいていたと思われる)。つまり切符を板状のブレードに見立て、その上下する運動、一方向に力を入れても反発する運動にヒントを得たと聞いた。磁気カードやスマホ誕生前の切符時代なら、少なからず切符をはじいた手遊びをした人は多いと思うが、それを時計の動力伝達の定速化装置に結びつける人物は中々いないだろう。


ケースバックから見た手巻き式自社ムーブメントのCal.GP09200-1153。ダイアル側からも確認できるが、5番車とふたつのガンギ車(センターよりやや下部)とその下で天輪を支える黒味のある2本のブリッジは、1860年にコンスタン・ジラールがスケッチし1867年に懐中時計として完成したスリー・ブリッジに由来する。ジラール・ペルゴはこの自史を顕彰する意味を込めて2014年に「ネオ ブリッジ」を発表した。主ゼンマイの生み出す動力伝達の安定化は、懐中時計時代から続く「フュジー(円錐均力車)機構」や「ル モントワール機構」等、過去・現在にわたって様々な時計会社が発案・製造している。しかし、ジラール・ペルゴの「コンスタント・エスケープメント」は、リップ型フレームと極細ブレードの運動が視覚的にもユニークだ。なお、2013年発表時のモデル名「コンスタント・エスケープメント L.M.」の「 L.M.」は、このシステムを発案した時計師のアイデアに理解を示した、故ルイジ・マカルーソ氏のイニシャルである。このような技術は1990年代から加速したDRIE(※注1)や、フォトリソグラフィ(※注2)といった技術に負うところが多い。当モデルで使用されている特許の30%(計13件)は今回新たに取得したもので、2013年モデルより部品数は14個少ない266個だ。特許例としては「脱進機の効率とパワーリザーブの向上」「天輪の効率と計時性能の向上」等である。なお当モデルは製造期間に長い時間を要するため、数量限定での販売となる。
(※注1) DRIE:Deep Reactive Ion Etching=深部反応性イオンエッチング。微細加工技術のひとつ。
(※注2) フォトリソグラフィ:Photolithography。写真の現像技術を応用したパターン作成技術。感光性の物質=フォトレジストの塗布・露光・現像の後にパターンを作成。参考:ジオマティック株式会社のHPより。


写真は2013年3月26日、世界に向けて発表された「コンスタント・エスケープメント L.M.」を真正面から捉えたカット。今回のモデルと比べて明らかな違いは時分針の位置。2013年モデルでは時分針は12時側にオフセットされており時分針はスケルトン加工、秒針はセンター置き、コンスタント・エスケープメントのフレームとブレードはブルーにまとめられている。一方の最新モデルでは通常の時計のようにセンター部に時・分・秒針をまとめ、ダイアル外周部のフリンジに設置されたブラック色の帯状部はホワイトマーキングで視認性を高めている。時計下部のネオ・ブリッジは2013年モデルより力強く、コンスタント・エスケープメントのフレームとブレードはパープルカラーだ。また9時位置のリニア型パワーリザーブインジケーターはホワイト一色だった2013年モデルに比べ、今回はブルーとホワイトに色分けされた。ケースは2013年ではカーボンコンポジット製チタンケース、2023年の今回はグレード5のチタンを採用。ムーブメントは手巻き式のCal.MVT-009100-0007から、同じ手巻き式を採用したCal.GP09200-1153を搭載。振動数は共に毎時21,600振動だが、石数は28石から29石へとひとつ増え、部品数は280個から266個へと14個減っている。パワーリザーブは2013年では約7日間、今回は7日間以上というスペックだ。左右対称のシンメトリックなデザインは共に不変で、これはコンスタン・ジラールが手掛けた「スリー・ブリッジ・トゥールビヨン」を踏襲する。なお、ストラップはブラックアリゲーターから、今回は微調整機構装備のチタン製トリプルフォールディングバックル付きラバーストラップへと変更された。


    MODEL Catalogジラール・ペルゴ モデルカタログ

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    ジラール・ペルゴ(GIRARD-PERREGAUX)についてのお問合せは・・・

    ソーウインド ジャパン株式会社
    〒102-0093 東京都千代田区平河町2-2-1
    TEL: 03-5211-1791


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