Gressive Premium vol.05 Saxon Watch Story 世界を驚かせ牽引する A.ランゲ&ゾーネの高度な技術
1994年に最初のコレクションを発表し、劇的な復活を遂げたA.ランゲ&ゾーネが、その後の時計界に与えた影響は計り知れない。たとえば最初のモデルのひとつ『ランゲ1』は、時分針、秒針、パワーリザーブ・インジケーターの針がすべて重ならない“オフセンター・レイアウト”と大型日付表示“アウトサイズ・デイト”で瞬く間に人気を獲得した。これに影響されスイスでは数年遅れて大型デイトのブームが巻き起こったほどだ。
またランゲの特徴は、新モデルの開発にあたり新型ムーブメントも同時に開発すること。1998年にレクタンギュラー(長方形)・ケースの『カバレット』が発表されたが、このモデルのために新たな角型ムーブメントを開発。1999年にはクロノグラフの『ダトグラフ』が登場するが、ここでもアウトサイズデイト搭載の新型クロノグラフ・ムーブメントが開発された。こうして2011年の段階で実に40ものキャリバーを擁するに至った。このような姿勢が、その後の自社製ムーブメント開発・マニュファクチュール化ブームの呼び水となったことは間違いない。
さらにA.ランゲ&ゾーネの時計作りは、古典技法の掘り起こしと、それを実現する高度な技術にその神髄がある。
たとえば、すべての部品は見えない部分にまで完璧に装飾と仕上げを施すこと、テンプ受けにハンドエングレービング(手彫り彫刻)を施すこと、軸受けのルビーをゴールドの“シャトン(リング)”を介して固定すること、など。これらは19世紀までの古い懐中時計に見られる古典的にして正統な高級時計ならではの製造技法である。
ランゲはこれら古典技法を復活させ、高級時計としての特徴を強くアピールしたが、その実現は決して易しいものではなかった、とウォルター・ランゲ氏は証言する。
「ランゲのスタイルとは何か? そこで私たちはランゲを有名にした懐中時計の要素を取り入れることを決めましたが、問題は必要な職人の技術と知恵が失われてしまったことでした。特に仕上げが問題であり、何十年間、誰もあの美しく伝統的な模様を彫ったことがなかったのです。そこでもっとも美しく彫り、磨くには、どの工具を使えばいいのか? それを検証するだけで何か月もかかりました」
独自の時計製造哲学と高度な技術の再構築。これがA.ランゲ&ゾーネの復活を導き、現在の高い人気を支えているのだ。
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新生A.ランゲ&ゾーネでは十の位の数字を記した十字型のディスクと一の位を記した円形ディスクを組み合わせることで画期的な大型日付表示“アウトサイズデイト”を実現した。
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ランゲの時計では、すべてテンプ受けに手彫りの模様がフリーハンドで彫られている。これによりすべてが一点ものとなり、工房の人が見れば誰が彫ったのかさえわかるという。
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ムーブメントの素材には硬く、作業の難しいジャーマンシルバー(洋銀)を用い、ロジウムメッキを施さず“グラスヒュッテ・ストライプ”と呼ばれる規則的な模様が付けられる。
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歯車の軸を摩耗から守り油脂を保持する人工ルビー。この赤い石は“シャトン”と呼ばれる金のリングで保持され、2~3本のブルースチール仕上げされたビスで固定される。
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受けやシャトンの固定に用いられるビスはスチール製であり、特殊な熱処理を施すことでブルーに着色される。この時の処理の温度と時間は厳密に管理され理想的なブルーを得る。
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ガンギ車のカバープレートやスワンネック・バネなどスチール製部品は鏡のように磨き上げられる。この作業には種々の研磨材を用い、最大2時間もの緻密な作業が要求される。
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独自の秒針停止装置を備えたランゲのトゥールビヨン・キャリッジ。極めて軽量に作られた部品の集合体だが、その研磨仕上げには数日間もの作業を要することがあるという。
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『プール・ル・メリット』などに採用されるチェーン・フュージー機構は、600個を超える部品で構成され、ゼンマイから発生されるトルクを一定に保ち、精度保持に役立つ。
構成:田中克幸(Atelier ADJET) / Direction:Katsuyuki Tanaka
取材・文:名畑政治 / Report&Text:Masaharu Nabata
写真:高橋和幸(PACO) / Photos:Kazuyuki Takahashi
協力:A.ランゲ&ゾーネ / Special thanks to:A.LANGE&SÖHNE
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A.ランゲ&ゾーネ
〒102-0083 東京都千代田区麹町 1-4 半蔵門ファーストビル
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