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参加ブランドも増え、さらに存在感を増す『Watches and Wonders Geneva』

Watches and Wonders Geneva 2021

ジュネーブで開催される時計見本市『SIHH』は『Watches and Wonders Geneva』と名称変更し、2021年4月7日~13日にウェブでの開催が決定。参加ブランドは現時点で38あり、かつてバーゼルの主要出展社であった有名ブランドも含まれています。



 昨年、つまり2020年は時計界にとって前代未聞の事態に見舞われた年となりました。その原因は、言うまでもなく新型コロナ感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)です。

 これによって時計の消費は世界的に大きく落ち込むことになりました。スイス時計協会(FH)の発表によれば、2020年のスイス時計輸出総額は、2019年の217億スイスフランと比べ、21.8%減の170億スイスフランにとどまりました。この落ち込みは、2009年の、いわゆるリーマン・ショックをきっかけとする世界金融危機の際の減少率(-22.3%)に近いということです。

 また、非常に興味深いのは、この原稿執筆時点で発表されている2020年1~11月のスイス時計の国別売上順位を見ると、1位が中国、2位がアメリカ合衆国、3位が香港、4位が日本、5位がイギリスとなっており、2位以下の国が軒並み前年と比べて売上額を減らしているにも関わらず、1位の中国だけが前年比+17.1%の伸びを示していることです。その理由は簡単です。これまで中国の方が流行先で購入していた時計、つまり日本にとってのインバウンド需要が消滅し、その分、中国国内で購入する機会が増えたからに他なりません。

 インバウンド需要が見込めなくなったのは日本だけでなく、時計の主要生産国であるスイスも同様。それと同時に、時計界の一大祝祭であるジュネーブとバーゼルの二大見本市が実質的な中止に追い込まれたことが、スイス時計産業にとっての真の意味での危機といえるでしょう。

 確かに不特定多数の人々が、ひとつの会場に密集する巨大見本市は感染症の蔓延を防ぐ意味で開催困難となるのは当然です。しかし、それ以前の問題として、出展料の高額化や各社横並びでの新作発表の是非、社会状況の変化によって巨大時計見本市そのものの存在意義やあり方が問われるようになり、それが新型コロナのパンデミックの影響によって一気に顕在化したと言えるでしょう。

 結局、かつて『SIHH(ジュネーブ・サロン)』と呼ばれていたジュネーブでの時計見本市は『Watches and Wonders Geneva』と名称を変更し、2021年は4月7日から13日にウェブのみで開催されることとなりました。参加ブランドは現時点で38。そこにはカルティエやA.ランゲ&ゾーネなど、従来のSIHHで中核をなしていたリシュモングループ各社に加え、ロレックスやパテック フィリップ、そしてタグ・ホイヤーやウブロ、ゼニスなどのLVMHグループ所属ブランドなど、かつてバーゼルワールドのメインホールで大きなスペースを占めていた有名ブランドがこぞってジュネーブでの出展を表明しているのです。

 そして、このウェブを舞台とする『Watches and Wonders Geneva』の後、中国上海において『Watches and Wonders Shanghai – ofine』と銘打ったリアル見本市が15ブランドの参加で開催されるということです。この見本市については今のところ、「ジュネーブでのデジタル見本市の数日後(a few days later)、上海での物理的サロンが続きます」としか紹介されていません。ただ、ここでもスイス時計界の中国市場重視の姿勢を見ることができます。


Watches and Wonders Shanghai – ofine

ウェブのみの『Watches and Wonders Geneva』の後、上海ではリアル見本市の『Watches and Wonders Shanghai – ofine』が15ブランドの参加で開催されるとのこと。



文:名畑政治 / Text:Masaharu Nabata


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