CZAPEK新型コロナ禍3年間での大躍進を決めたチャペック最強のゲームチェンジャー 04
2023年、Cal.SXH5の再構築ムーブメント、Cal.SXH7と
第10回「オンリーウォッチ」への出品
本特集の冒頭ページ(01)で紹介したように、2023年6月、チャペックは同年11月5日にジュネーブで開催される第10回「オンリーウォッチ」へ、「プラス・ヴァンドーム“コンプリシテ”『いつも心に勇気を』」を出品することを発表した。これで当社の出品は4回目のことになる。詳細は冒頭ページ(01)に記してあるが、ドンツェ・カドラン社によるマルチカラー・ダイアルと、独立時計創作家協会アカデミー(AHCI)に所属する独立時計師ベルンハルト・レーデラー氏との共作新型ムーブメント、手巻き式Cal.SXH8がポイントだ。さらに当キャリバーの見所は、オープンワークによって明らかにされる12時位置のディファレンシャル・ギアと、ダイアル下部に2カ所設置されたデュアル(ダブル)・エスケープメントである。よって着用者は作動状況をいつでも鑑賞できる。
また、自社ムーブメントのCal.SXH5のメカニズムを再構築した、Cal.SXH7を搭載する「アンタークティック レヴェラシオン」の3月発表の件も、冒頭ページ(01)と当ページトップのメイン写真で記述済みだ。どうやらチャペックおよびクロノード社は、2021年の自社初のスプリットセコンド・クロノグラフ「アンタークティック ラトラパント シルバー・グレイ」(自動巻き、Cal.SXH6)以来、時計のメカニズムをダイアル側にレイアウトし、作動状況を鑑賞できることに熱心なようだ。
創立8年目で8個のムーブメント、さらに将来の展望
2023年になってから半年の間に、チャペックはCal.SXH7とCal.SXH8というふたつの新型ムーブメントを発表している。これは彼らのいう“選び抜かれた少数精鋭サプライヤーによる、水平統合型の時計製造方程式”が相当に功を奏していることの証だろう。ちなみに、再興以来発表された8個のチャペック・ムーブメントを以下に記す。
Cal.SXH1
2015年発表。手巻き。7日巻き。「ケ・デ・ベルグ」コレクション搭載。ムーブメントの設計担当はハリー・ウィンストンの「オーパス10」などを手掛けた気鋭の独立時計師、ジャン・フランソワ・モジョン氏と、彼の会社であるル・ロックルのクロノード社との共同開発。直径32.00×厚さ4.75mm、31石、毎時21,600振動数(3Hz)、パワーリザーブ約7日間(168時間)。
Cal.SXH2
2017年発表。手巻き。トゥールビヨン+GMT。「プラス・ヴァンドーム・トゥールビヨン・サスペンドゥ」搭載。クロノード社との共同製作。直径34.8×厚さ9.8mm、35石、毎時21,600振動数(3Hz)、パワーリザーブ60時間。
Cal.SXH3
2018年発表。自動巻き。初のインテグレイテッド・クロノグラフ。「フォーブル・ド・クラコヴィ」コレクション搭載。ヴォーシェ マニュファクチュール フルリエ社のビスポーク・ムーブメントがベース。直径30.00×厚さ6.95mm、毎時36,000振動数(5Hz)、パワーリザーブ65時間。COSC認定クロノメーター。
Cal.SXH4
2019年発表。アワーグラス。「クリスタル・タイム」搭載。チェコのMoser Glassworks社のマスター・グラスメーカーによるハンドメイド。無鉛エコ・クリスタルガラス(シリカ・クリスタルSiO2)、吹きガラス手法による成型、手作業によるカットとハイグロス(高光沢)研磨、高さ22.5cm、測定時間5分。
Cal.SXH5
2020年発表。自動巻き。初の自社ムーブメント。マイクロローター採用。「アンタークティック」コレクション搭載。直径30.0×厚さ4.2mm、部品数193個、28石、毎時28,800振動数(4Hz)、パワーリザーブ60時間。
Cal.SXH6
2021年発表。自社ムーブメント。チャペック初のモノプッシャー・スプリットセコンド・クロノグラフ。自動巻き。マイクロローター装備。「アンタークティック ラトラパント シルバー・グレイ」搭載。7つのスケルトナイズド・ブリッジ。オープンワークモデルでダイアル側にメカニズムを再構築。クロノード社との共同製作。部品数292個、49石、毎時28,800振動数(4Hz)、パワーリザーブ60時間。
Cal.SXH7
2023年3月発表。自社ムーブメントの自動巻きCal.SXH5のメカニズムを、ダイアル側から視認できるように再構築。自動巻き。「アンタークティック・レヴェラシオン」搭載。直径30.0×厚さ4.2mm、部品数152個、25石、毎時28,800振動数(4Hz)、パワーリザーブ60時間。
Cal.SXH8
2023年6月発表。自社ムーブメント。手巻き。ベルンハルト・レーデラー氏との共同開発。12時位置にディファレンシャル・ギアを備え、4-5時と7-8時にデュアル(ダブル)・エスケープメントを搭載。オープンワーク仕様。同年11月開催の第10回「オンリーウォッチ」出品作の「プラス・ヴァンドーム “コンプリシテ”『いつも心に勇気を』」や、8月発表の「プラス・ヴァンドーム コンプリシテ ハーモニー・ブルー」並びに「プラス・ヴァンドーム コンプリシテ スターダスト」に搭載。部品数293個、44石、毎時21,600振動数(3Hz)、パワーリザーブ約72時間。
最後にCEOザビエル・デ・ロックモーレル氏から将来の計画と、主要コレクションに込められた“ひと言”を語ってもらった。
「お客さまの希望に応じられるような年間生産量を増やしたいという気持ちの一方で、あまり増やしたくはないという考えもあります。年間3000~4000本ぐらいが妥当と考えています。
そうですね、
『ケ・デ・ベルク』……初代チャペックに忠実。
『プラス・ヴァンドーム』……我々のクリエイティブの披露。
『フォーブル・ド・クラコヴィ』……スポーティ、メカニカル、オート・オルロジェリー(高級時計)。
『アンタークティック』……正しいデザインと価格。
『アンタークティック・ラトラパント シルバー・グレイ』……高級メカニカル。今以上のことができることの証明。
こんなところでしょうか」(チャペックCEO、ザビエル・デ・ロックモーレル氏)
くどいようだが2015年11月の復興から2023年8月までの足掛け9年の間に、主要8コレクションと計8個のムーブメントを発表し、その半分が自社ムーブメントとはすさまじい躍進ぶりではないか。その鍵のひとつが2020年の「アンタークティック」にあったことは言うまでもない。お世辞ではなく、ザビエル・デ・ロックモーレル氏は相当な手腕の指揮官である。1990年頃より数多くの復興ブランドが登場し、私もそれらの経緯をかなり見てきたが、チャペックはその豊かな創造力と手堅い計画性においては抜きん出た存在だと思う。「人の話を聞くことで学んできた」指揮官の次の一手を、世界中の時計愛好家が期待している。
※2023年の新作に関しては日本入荷が2025年になります。その時の為替によって大きく変動する場合があります。
取材・文:田中克幸 / Report & Text:Katsuyuki Tanaka
写真:高橋敬大 / Photos:Keita Takahashi
協力:ノーブルスタイリング / Thanks to:Noble Styling
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