CZAPEK新型コロナ禍3年間での大躍進を決めたチャペック最強のゲームチェンジャー 03
2021年…初のモノプッシャー・スプリットセコンド、
そして2022年のラ・ショー・ド・フォン新工房開設

チャペックのオープンワーク・ダイアルは、2017年発表のセカンドコレクション「プラス・ヴァンドーム トゥールビヨン サスペンド」に少しだけ伺える。しかし本格的なオープンワークは、2021年8月の「ジュネーブ・ウォッチ・デイズ 2021」で発表された写真の「アンタークティック ラトラパント シルバー・グレイ」だ。それまでは「ケ・デ・ベルグ“リコシェ”」(2017年)のギョーシェや、「フォーブル・ド・クラコヴィ“グランフー”」(2018年)の高温焼成ダイアルなどドンツェ・カドラン社の工芸美が知られていたが、2021年に突然出現したオープンワークダイアル・モデルには少々驚かされた。なお、当モデルのメインプレートにオレンジを使用した特別仕様品「アンタークティック・ラトラパント“サンライズ”『新しい夜明けを願って』」が、2021年11月開催の第9回「オンリーウォッチ」に出品された(当記事1ページ目《01》で紹介)。
2015年の再興以来、チャペックのゲームチェンジャーとなった2020年発表の「アンタークティック」。この翌年の2021年8月に開催された「ジュネーブ・ウォッチ・デイズ 2021」において、チャペックは自社初のモノプッシャー・スプリットセコンド・クロノグラフ「アンタークティック・ラトラパント シルバー・グレイ」を発表する。
「当初はシンプルなクロノグラフを考えましたが、我々の会社規模からすると量産は少々難しい……、そこで(逆に)ハイコンプリケーションのクロノグラフを目指しました。アイデアはスプリットセコンド機能をダイアル側に明らかにするということ。『ケ・デ・ベルグ』と同様なデザインで、ダイアルの4時と8時に30分積算計とスモールセコンドを配置しました」(チャペックCEO、ザビエル・デ・ロックモーレル氏。以下同)
当モデルの搭載ムーブメントは、クロノード社との共同開発による自動巻きのCal.SXH6。スプリットセコンド・モジュールをダイアル側に配置することで、着用した状態で視覚的にカム、レバー、ホイールの作動を確認できるというものだ。このアイデアの元は遡ること9年前の2012年、ヴァルジュー7733のヴィンテージ・ムーブメントを用いて少数限定生産し、友人等に販売したクロノグラフ・モデルにある。これはチャペック復興プロジェクトの資金調達方法のひとつだった。デ・ロックモーレル氏等再興メンバーがクラウドファウンディングを行うのは、3年後の2015年8月から2016年10月のことになる。まず初めの一歩がヴァルジュー7733だった。



2012年、チャペック再興プロジェクト用資金調達のため、ごく少数を製造・販売したヴィンテージのヴァルジュー7733搭載クロノグラフ…、これが「ダイアル側にメカニズムが露出したクロノグラフ」というアイデアにつながる。当初デ・ロックモーレル氏は普通のクロノグラフを考えていたものの、より高度なモノプッシャー・スプリットセコンド・クロノグラフへとアイデアは発展。このような経緯でクロノード社との共同開発により完成したのが「アンタークティック・ラトラパント シルバー・グレイ」搭載の自動巻きCal.SXH6だ。資金調達プロジェクトから約9年、最初のアイデアから約6年を必要としたチャペック6番目のムーブメントである。写真とスケッチを見ると、ダイアル側に設置されたスプリットセコンド・クロノグラフモジュールを確認できる。6時位置から12時方向に順番に説明すると、まず「CZAPEK」と刻印されたパーツがスプリットセコンド・クランプ、そのすぐ上にはスプリットセコンドのコラムホイール、さらに上の小ぶりのギアがサテライト・ミニットトレイン(輪列)、時計中央部の3本足のパーツがスプリットセコンド・メカニズムを支えるトライポット・ブリッジになる。そして12時位置にはクロノグラフ用コラムホイールが設置。サテライト・ミニットトレインは特許取得済み、スプリットセコンドのメカニズムは特許出願中(2021年7月段階)。
ダイアル表現で新境地を見せる
またCal.SXH6を搭載し、オレンジカラーの地板を用いた「アンタークティック・ラトラパント“サンライズ”『新しい夜明けを願って』」を2021年11月の第9回「オンリーウォッチ」に出品。オレンジは当回のテーマカラーであり、チャペックとしては2017年と2019年に続く3回目の出品だった。
一方、この年チャペックは8月の「ジュネーブ・ウォッチ・デイズ 2021」開催前の4月に「アンタークティック エメラルド・アイスバーグ」を発表している。これは南極大陸のある特定地域で報告される緑色の氷河(アイスバーグ)をダイアルで表現したモデルで、前年(2020年)の「アンタークティック オリオン・ネビュラ」、「アンタークティック アビス」に続くアンタークティック・シリーズ第3作目となる。“オリオン・ネビュラ(Orion Nebula=オリオン星雲)”、“アビス(Abyss=深淵)”、“アイスバーグ(Iceberg=氷河)”と、いずれもメタレム社との共同開発による、幻想的で神秘性が漂うダイアルにチャペックの新境地が見えた。
翌年の2022年、この年にバーゼルワールドの消滅は確実となる。一方、復興7年目のチャペックは6月にラ・ショー・ド・フォンに自社工房を新設、2020年に続き次なるステージへの扉が開く。
「これまでのル・ロックルでは十分な広さを確保できなかったので、ラ・ショー・ド・フォンに新工房を建設しました。駅の北東部(ニューシャテル側)にあります。スタッフは全部で22名。その内15~16人がフルタイム勤務です。またル・ロックルの本社は約80平方メートルだったのに対し、現在は約700~800平方メートルになりました」
2022年11月、つまり新工房開設の5カ月後の時にデ・ロックモーレル氏から伺った話では、その時のスタッフの人数は全部で10名(3名は工場勤務、2名はインデペンデントで他はアドミニストレーションやコーディネーター、バイヤーなど)。その後、この原稿を書いている2023年8月5日までの約9カ月の間に、スタッフは倍以上に増え、本社工房の広さは9~10倍程になった。これも世界中に急増するチャペック愛好家に応えるためのものだ。


2022年6月に完成、メディアに発表されたラ・ショー・ド・フォンの新工房。それまでは年間180本ほどの生産量だったが、急増するオーダーに対応するため計画された。「アンタークティック」というゲームチャンジャーの誕生に加え、新型コロナ禍でも立ち止まらず前進することに決めたチャペックは、この新工房で第二の黄金時代を迎えることになる。今後の予定生産量は「あまり増やしたくはない」と言いつつも「年間3000~4000本ぐらいが妥当」とデ・ロックモーレル氏は述べる。
ケース径のアップデイトも完了
2010年代から時計界に見られ始めた潮流だが、昨今では“小径・薄型ケース”がスタンダードになっている。チャペックもこれに呼応するかのように、2022年3月“エレガントスリム・ケース”の「アンタークティック S」(Cal.SXH5搭載)3モデルを発表。ケース径はオリジナルモデルの40.5mmから2mmサイズダウンした38.5mm。特別なトラペゾイド(台形)パターンがエングレーブされた、フランケ・ダイアルのサーモンならびにブルーの2モデルと、結晶化したオスミウム製ダイアルのフローズンスター1モデルがラインナップされた。また前年発表のオープンワークのスプリットセコンド・クロノグラフの新バージョン「アンタークティック・ラトラパント アイスブルー」(Cal.SXH6搭載。世界限定99本)も、2022年のトピックモデルのひとつであろう。
一方、8月には「ケ・デ・ベルク」よりふたつのギョーシェ・ラインが発表され、特に「ケ・デ・ベルク エメラルド・グリーンL」は2017年秋発表の同名モデルで披露した“リコシェ”ハンドメイドギョーシェの復活モデル。ダイアルはル・ロックルのドンツェ・カドラン社が担当し、バージョンアップした手巻き式Cal.SXH1を搭載している点は注目したい。
ファーストコレクション「ケ・デ・ベルグ」のクラシックなデザインとは別のモダンデザインとなった「アンタークティック」の創案、自社ムーブメントの開発、初の自社ムーブメントCal.SXH5やメカニズムの視覚化を試みた初のモノプッシャー・スプリットセコンド・クロノグラフのCal.SXH6、そして新工房の開発と、2020年からのわずか3年間でチャペックは目覚ましい躍進に成功した。そして2023年には……。
>>第10回「オンリーウォッチ」への出品とCal.SXH5の再構築ムーブメント、Cal.SXH7
※2023年の新作に関しては日本入荷が2025年になります。その時の為替によって大きく変動する場合があります。
取材・文:田中克幸 / Report & Text:Katsuyuki Tanaka
写真:高橋敬大 / Photos:Keita Takahashi
協力:ノーブルスタイリング / Thanks to:Noble Styling
INFORMATION

チャペック(CZAPEK)についてのお問合せは・・・
株式会社ノーブルスタイリング
〒153-8580 東京都目黒区三田1-4-1
TEL: 03-6277-1604
チャペック ブランドページを見る