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CZAPEK新型コロナ禍3年間での大躍進を決めたチャペック最強のゲームチェンジャー 02

チャペックのゲームチェンジャーとなった
2020年登場の「アンタークティック」とCal.SXH5

2022年11月1日に東京・三田でお会いした時のショット。弾丸出張のような感じで、その朝、成田空港に到着したばかりのご様子

2022年11月1日に東京・三田でお会いした時のショット。弾丸出張のような感じで、その朝、成田空港に到着したばかりのご様子。とはいえ、インタビュー直前まで携帯電話でスイスと何か打ち合わせを行い、落ち着く様子は一向にない。その時は日本時間の午後3時過ぎ、つまりスイスは午前7時過ぎ(冬時間)なので一体誰と? と思っていたらパートナー企業のひとりだったらしい。目下取り組み中の課題に関することで、波に乗っている好調な企業の勢いを感じた。


 2015年11月10日、ファーストコレクションの「ケ・デ・ベルグ」(手巻き、Cal.SXH1搭載)発表以来、チャペックは2023年8月現在までに計8個のムーブメント(その内自社製は4個と言ってよいだろう。なお8個のムーブメントは当記事4ページ目《04》にすべて掲載)を発表している。この8年間の節目となったのが2020年、きっかけは同年5月発表の「アンタークティック」(Antarctique=南極)だ。初の自社ムーブメントである自動巻きCal.SXH5を搭載したこの新作が、以降続くチャペック飛躍の起爆剤となった。


「結果として『アンタークティック』は、チャペックのゲームチェンジャーになりました」(チャペックCEO、ザビエル・デ・ロックモーレル氏。以下同)


 2020年といえば「新型コロナの年」。世界中に蔓延したこの感染症の悪影響はスイス時計界も例外ではなく、ちょうど以前より内包していた問題が顕在化し始めたバーゼルワールド(BASEL WORLD)は開催延期、結果的に消滅へのきっかけとなった。またSIHHも開催中止で、これがいわば発展的解消へとつながり「ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ(Watches & Wonders Genava)」の誕生へとつながる。もちろん新作発表会はリモートのみ、スイス、フランス、ドイツ等からの時計関係者の来日も中止。しかしこの年、復興5周年にして初代の創業より175周年を迎えたチャペックは「アンタークティック」の登場で躍進する。

 きっかけは1年前の2019年、この頃デ・ロックモーレル氏はまさに新作時計の考案中であった。また2019年といえばジュネーブに初のブティックをオープンした年でもある。


2017年の第7回「オンリーウォッチ」出品作「ケ・デ・ベルグ No.25『いつも心に勇気を』」

Antarctique Terre Adelie
アンタークティック テール・アデリー


チャペック躍進の原動力となったゲームチェンジャー「アンタークティック」コレクションのデビューモデルのひとつ「アンタークティック テール・アデリー」。2020年5月発表。ダイアルはパートナー企業のメタレム社が30年前に開発した“ラメ(Lamé)”技法を復活、チャペックの“垂直方向における対称性の美学”に基づき日付表示は6時位置に設置。40.5mmのステンレススティール・ケースには独自発想のダブル“トロンプ・ルイユ”(trompe-l'œil:騙し絵)カーブが組み込まれる。インテグレイテッド・ブレスレットの中央には「CZAPEK」の「C」をかたどったコマを配置。初の自社ムーブメントの自動巻きCal.SXH5搭載。4つのゴールド製慣性マスロット(ウェイト)を備えるフリースプラング・テンプや、スイス以外の唯一のパートナー企業であるドイツのAGOSI社によるプラチナ製マイクロローターを装備。なおコンポーネント等の製造は計15社、ケースやダイアル等の外装部はメタレム社を含めて計6社が担当した。ムーブメントの案出はチャペックのコンセプト担当、ダニエル・マルティネス氏。

ケース径:40.5mm
ケース厚:10.6mm
ケース素材:ステンレススティール
防水性:120m
ストラップ:リンクがモダンな「C」を描くステンレススティール製ブレスレット、独自の「イージー・リリース」システム、カーフレザーまたはラバー・ストラップが付属
ムーブメント:自動巻き、自社製ムーブメントCal.SXH5、28石、毎時28,800振動、パワーリザーブ約56時間
仕様:時・分表示、センターセコンド、日付表示(6時位置)、手作業によるラメ装飾がなされたダイアル、無反射加工がなされたグラスボックス型サファイア・クリスタル
限定:世界限定99本
※完売品


「人の話を聞くことで私は学んできました」


「シェアホルダーでありコレクターでもある友人がいましてね。彼が『シンプルな時計が欲しい』と言うのです。彼はすでに我々の時計を所有していますが、これは海などのリゾートには向かない、と。もっとスポーティで色気のある時計と言うのですね。ブレゲやランゲのコレクターが満足するような、日常でも使えるスポーティな時計です」


 デ・ロックモーレル氏の話に私に既視感を覚えた。「高級腕時計の所有者が満足するような日常使いの時計」という表現は、以前パルミジャーニ・フルリエの当時のCEOダビデ・トラクスラー氏から、2020年夏発表の「トンダ GT」「トンダグラフ GT」の開発動機でも聞いたフレーズである。この時期、欧米のコレクターたちにはこのような共同意識でも芽生えていたのだろうか。


「そこで新作ですが、初代チャペックは美を追求した人物なので、我々も同じ意志を引き継いでいます。新作はデザインもムーブメントにも“美”が存在し、どこかユニークで他とは異なるものです。これが『アンタークティック』と我が社初の自社ムーブメント、自動巻きCal.SXH5につながっていきました」


 また2019年と言えば、この年の5月にチャペックはチェコのMoser Glassworks社との共同製作品、「クリスタル・タイム」(Cal.SXH4搭載)というアワーグラス(砂時計)を発表している。この時期は飛躍へと導くアイデアを試みた時だったかもしれない。




 新作「アンタークティック」はチャペック初の自社ムーブメント、自動巻きCal.SXH5を搭載する。


「まず、SXH5キャリバーの輪列やエスケープメントを露わにしようとしました。ローターはマイクロローターの使用を考えましたが、最初のアイデアはあまり良くなかったので(設計に)改良を施しました」


 Cal.SXH5のマイクロローターは完全リサイクルのプラチナ950を使用し、オフセット・レイアウトされた。これにより輪列構造は十分に鑑賞可能となり、4つのゴールド製マスロット(ウェイト)による可変慣性を持つフリースプラング装備の天輪によって、高精度な調整が可能に。歯車の輪列は7つのスケルトンブリッジによって保持される。私見だがこのブリッジには「フォーブル・ド・クラコヴィ」のスケルトンローターとの一部類似性が見られる。Cal.SXH5は19世紀の懐中時計に着想を得ており、手作業で内側に6つの面取り、側面にはドローイングを施した最上級の仕上げが施された。


ブレスレットやダイアルの表現力で新境地に至った2020年


 一方、外装部での注目ポイントのひとつはブレスレットとラグだ。


「『アンタークティック テール・アデリー』をご覧ください。カスタマー等周囲の人に聞いたところ、みなさんラグ付きのケースが良いというのですね。つまりクラシックなデザインを好んだのです。しかし私はケース一体型のラグに決めました。こうして2019年の6月にはデザインが決定。サイドやリューズプロテクションは『ケ・デ・ベルグ』からの採用です。ガラスはフラットではなくドーム型、さらに高品位なスポーツウォッチとして完成させるために、ブレスレットのコマのデザインを『CZAPEK』の『C』をかたどったデザインにしました。『C』が隙間のないブレスレットを貫いているデザインですね」


 結局、周囲の意見を聞かずデ・ロックモーレル氏は「アンタークティック」において、ケース一体型のインテグレイテッド・ブレスレットを採用する。「人の話を聞く」と言いながらその逆を行くのも、ある意味人の話を聞くことになるのだろう。確かにインテグレイテッド・ブレスレットは、高級スポーツ(スポーティ)ウォッチのひとつの要素にはなっている。





 さらに「アンタークティック」で気付かされるのは、それまではハンドメイドギョーシェ“リコシェ”が中心だったダイアル表現に、新たな個性が生まれたことだ。そのダイアルの製造はチャペック創業以来のパートナーである、スイス・ジュラ地方で90年以上の歴史を持つル・ロックルのメタレム社(Metalem SA)。たとえば彼らが「アンタークティック テール・アデリー」で表現する独特の縞模様は、彼らが30年前に開発した独自のラメ(Lamé)を、「アンタークティック」のために復活させた技術である。また同時期発表の「アンタークティック アビス」の、南極海域最大深度7434mの海の深淵を表現したヴァーニッシュ(ニス)仕上げもメタレム社によるものだ。


「このラメはサンドペーパーよりも深く仕上げることのできる手法で、櫛を使います。1979年、つまり50年近くも前の技術です」


 デ・ロックモーレル氏が冒頭で「『アンタークティック』はチャペックのゲームチェンジャーになりました」と述べたように、2020年、世界が新型コロナ禍で青息吐息の年にチャペックは飛躍し、その勢いは2021年、2022年へと続いていく。





※2023年の新作に関しては日本入荷が2025年になります。その時の為替によって大きく変動する場合があります。



取材・文:田中克幸 / Report & Text:Katsuyuki Tanaka
写真:高橋敬大 / Photos:Keita Takahashi
協力:ノーブルスタイリング / Thanks to:Noble Styling


INFORMATION

チャペック(CZAPEK)についてのお問合せは・・・

株式会社ノーブルスタイリング
〒153-8580 東京都目黒区三田1-4-1
TEL: 03-6277-1604


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