Watch Person Interview vol.65 オーデマ ピゲ・ルノー エ パピ ディレクター ジュリオ・パピ、オーデマ ピゲ グローバル ブランド アンバサダー クローディオ・カヴァリエール インタビュー
オーデマ ピゲのDNAが導いた
世界初のSS製ラグジュアリースポーツウォッチ
ここで話題は一旦、ロイヤル オークへ移る。複雑時計製造に確固たる歴史を築いてきたオーデマ ピゲと、1972年発表のスポーツウォッチ、ロイヤル オーク開発との接点が以前より分からなかったからだ。特にケースをビス留めベゼルで押さえるという発想の自由さは、複雑時計の雄からどのようにして生まれたのか?
「1972年発表のロイヤル オークは、それ以前のオーデマ ピゲが開発したクラシック・モデルとは全く異なる時計が出現したと思われるかもしれませんが、実際のところこれには必然性があります。
オーデマ ピゲは1920年に世界最小のミニッツリピーター、1955年に初の閏年表示付きパーペチュアルカレンダー搭載腕時計を発表しました(1963年~1969年販売。Cal.13VZSSQP、18KYGケース、6本のみ製作。ケース径36.5mm)。また1967年には世界最薄の自動巻きムーブメントも登場しています(Cal.2120。同年には厚さ5.5mmの極薄自動巻きトゥールビヨンも発表)。その歴史において絶えず“世界初”の機構・モデルを発売してきたわけです。
この歴史から見ると、1972年発表のロイヤル オークは“世界初のステンレススチール製ラグジュアリースポーツウォッチ”になり、これも世界初ということで当社の歴史上に現れた必然性があります。常に、他には無い新しいものを追求してきたのが、オーデマ ピゲなのです」(カヴァリエール氏)
それにしても、あの時代にベゼルをビス留めするという、考えようでは乱暴なアイデアが、よく世界三大高級時計会社のひとつに数えられるオーデマ ピゲから生まれたものである。
「あの時代の風防はボックス型と呼ばれていたプラスチック製でした。その後にサファイアクリスタル・ガラスへと変更されましたが、最初の頃はこれの加工が大変難しかった。そこでガラスをベゼルでケースに押さえ込む案が生まれるのですが、これを考案したのがジェラルド・ジェンタさんです。
当時の技術ではうまく成型できなかった問題を、ビス留めベゼルの使用で解決したのです。この方式は後にパテック フィリップ(ノーチラス。Ref.3700/1。1976年)やIWC(インヂュニアSL。Ref.1832。1976年)へと継承されました」(パピ氏)
「ノーチラスもインヂュニアもケース形状に大した変わりはありません。ジェンタさんが考案したのはベゼルの形状を変えたことです。あの時代では、ビス留めベゼルによって初めて防水機能を実現することができたのです。
最初はベゼルを外してその下に大きなガスケットを付けましたが、これが大きすぎてベゼルからはみ出てしまった。厚みのあるガスケットなので、確実に固定するためにネジを使ったわけです。これがロイヤル オークのDNAになりました」(カヴァリエール氏)
つまり、まずデザインありきではなく機能面から必然的に生まれたデザインで、これにより現代の“世界初のステンレススチール製ラグジュアリースポーツウォッチ”の原型が誕生した。“世界初”の時計を開発してきたオーデマ ピゲにとっては、突然の産物ではなく必然の製品であったとカヴァリエール氏は説明する。
取材・文:田中克幸 / Report&Text:Katsuyuki Tanaka
写真:堀内僚太郎 / Photos:Ryotaro Horiuchi
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