Watch Person Interview vol.65 オーデマ ピゲ・ルノー エ パピ ディレクター ジュリオ・パピ、オーデマ ピゲ グローバル ブランド アンバサダー クローディオ・カヴァリエール インタビュー
創業後まもなくして始まる
理想的な“音創り”の道
スイス時計産業は16世紀半ばにジュネーブで始まり、ジュラ山脈地域の中でも17世紀末に時計製造の産声を上げたのがジュウ渓谷(ヴァレ・ド・ジュウ=Valle de Joux)である。当地はジュネーブで最終組み立てと販売が行われる複雑時計のムーブメントの製造が多く、“複雑時計の揺りかご”と呼ばれるまでに発展する。
その複雑時計の名門のひとつが、1875年にジュール ルイ・オーデマとエドワール オーギュスト・ピゲが設立したオーデマ ピゲだ。
「複雑時計の製造が始まった具体的な年は分かりませんが、実際には創業前から製造していました。創業後の1882年から1892年までの10年間に1600個の時計を生産していますが、そのうち半数の800個がチャイム(ストライキング)機構を搭載するコンプリケーションで、これらは完成品ではなくムーブメントの供給になります。このほかはクロノグラフやパーペチュアルカレンダーなどですね」(クローディオ・カヴァリエール氏。以下、カヴァリエール氏)
特に最初のミニッツリピーターの小型ムーブメントを供給したのは、1892年のルイ・ブラン兄弟会社、現在のオメガである(1903年に社名をオメガと決定)。ムーブメントだけの供給だったのでケースメーカーなどは不明だが、これは現在ビエンヌのオメガ・ミュージアムが所蔵する。
歴史的にジュウ渓谷は複雑時計のムーブメント製造地として有名だが、その中でも特にオーデマ ピゲがリピーターを含めたストライキング機構に関係した理由はあるのだろうか?
「ジュウ渓谷では時計師の家がそれぞれ専門分野を持っており、オーデマ ピゲの家系はリピーターだけというのではなく、いわゆる“音の鳴る機構を小型化する”ことを専業とするスペシャリストでした。会社創立以前よりの専門分野なので、創立後も製造の中心となったのは自然の成り行きでした」(カヴァリエール氏)
ここで時計製造におけるリピーター機構の特別性をジュリオ・パピ氏が説明する。
「時計技術の頂点に位置するリピーターを作ることは、いわば時計師の夢なのです。私は技術者ですが“音”は本来、技術者の仕事の分野ではありません。それだからこそ、聴いて感動する音に携われるのはとてもやりがいのある仕事です。
でも決して自己満足の世界ではありません。その良さを評価し認めてくれる顧客がいるからこそ、我々の技術も進歩するのです」(ジュリオ・パピ氏。以下、パピ氏)
「1980年代には機械式時計の製造が沈滞しましたが、チャイム機構の時計は現在でも作られています。これは顧客のニーズがあったおかげで、もしニーズがなければ我々のノウハウも途絶えてしまいます」(カヴァリエール氏)
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ジュリオ・パピ
Giulio Papi
オーデマ ピゲ・ルノー エ パピ(APRP)・ディレクター。1965年5月スイス、ラ・ショー・ド・フォン生まれ。1984年、時計学校卒業後オーデマ ピゲ入社。その後、同期入社のドミニク・ルノー氏と共にルノー エ パピ(APRPの前身)を設立。数多くの有能な時計師を輩出したことにより、日本の一部メディアから「独立時計師養成機関」と呼ばれるまでに当社を成長させる。オーデマ ピゲ・グループの一員となった現在も、APRPの高い技術開発力を牽引するスイス時計界の重鎮的存在。 -
クローディオ・カヴァリエール
Claudio Cavaliere
オーデマ ピゲ・グローバル ブランド アンバサダー。1972年1月スイス、ジュネーブ生まれ。大学で機械工学と経営学を専攻し、1997年にモバード(MOVADO)グループの製品開発製造プロダクト・マネジャーとして入社。2003年~2007年はグッチ ウォッチグループでプロダクト・マネジャーから商品マーケティング部門のトップへ、その後2007年にオーデマ ピゲ入社。プロダクト製造部門責任者の後、商品マーケティング部門のトップに。2014年グローバル ブランド アンバサダーに就任。
取材・文:田中克幸 / Report&Text:Katsuyuki Tanaka
写真:堀内僚太郎 / Photos:Ryotaro Horiuchi
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