Watch Person Interview vol.65 オーデマ ピゲ・ルノー エ パピ ディレクター ジュリオ・パピ、オーデマ ピゲ グローバル ブランド アンバサダー クローディオ・カヴァリエール インタビュー
リピーターの音質を決定する
“音の最終検査官”
ここでリピーター時計に話題は戻るが、顧客から寄せられる特に多い要望をパピ氏に聞いてみた
「リクエストの多くは、雑音をなんとかして欲しいというものです。もうひとつは防水性能のあるリピーターですね。ノイズと防水、このふたつです。アンティークピースの修復部門に寄せられると、これは最初から作り直しになります。
時々、ゴングが壊れていてまったく音が鳴らない時計もありますが、私たちにはその音がどのようなものだったかを確かめることはできません。お客様の記憶に基づいてゴングを作り直すので、お客様との会話を通しての修復作業になります」(パピ氏)
ミニッツリピーターなどのストライキング機構搭載時計は、何と言っても“音”が命。最近では、音響技術など科学的アプローチを試みて音創りを行う時計会社が増えつつあるが、実際にはどれだけ有用なのだろうか?
「音は楽器などのアコースティックの世界になります。例えば弦楽器の職人は楽器の製作にあたっては自分の感覚を頼りにするわけですが、その音の分析は科学者でないとできません。
音創りにはこのような職人のアドバイスを受けることもできますが、これはあくまでも彼らの感覚、聴覚であって物理的なデータを解析するものではないのです。そのためには音に関する専門研究所との共同研究が必要になります。我々も実際に行っていますよ。
現在の若い時計師は技術的には優れていますが、音・聴覚は子供の頃から音楽に接していないと感覚が鋭敏になりません。ということは音の調整能力に不得意になっているわけです。そこで音を数値化してゴングの調整位置を示すソフトの開発が必要です。
我々も今回のリピーター開発に採り入れていますが、このソフトの共同開発の相手はローザンヌ工科大学です。まだ目標とする音に正確に合わせるには、時計師の最終調整が必要ですが、ゴングの製造など理想的な音に近づけるためのガイドにはなっています」(パピ氏)
このようなソフトがあれば理想的な音に近づけることができるが、最終的な調整は別次元の領域、と彼は続ける。
「最終的な音の調整には“音の専門家”が担当し、出荷前に彼らが検査をしています。聴覚が発達している人は、子供の頃から音楽に慣れ親しんでいて、成長と共にその機能も発達していくので、そういう人たちが“音の最終検査官”を担当するのです。
重要なのは音に対する感覚・聴覚が発達していること。そのためには幼児期より音楽に接していることが必要になりますね」(パピ氏)
パーペチュアルカレンダーやトゥールビヨンなど、種類豊富な時計機構の中でも唯一、聴覚に訴えるのがミニッツリピーターなどのストライキング機構。
懐中時計から腕時計への移行により構成パーツは小型化し、かつ防水性能の向上により、現代のストライキング機構は設計・製造する上において、音質・音響的には圧倒的に不利な状況にある。
その中でずば抜けた音創りに成功したのは、19世紀の時代から“音の鳴る機構を小型化する”ことを専業とし、絶えず“世界初”を目指してきたオーデマ ピゲのDNA無くしては語れない。複雑時計の揺りかごで息吹いた伝統は、21世紀の現代でも脈々と受け継がれている。
取材・文:田中克幸 / Report&Text:Katsuyuki Tanaka
写真:堀内僚太郎 / Photos:Ryotaro Horiuchi
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