Watch Person Interview vol.51 さまざまな技法を駆使した 『Vingt-8』の豊富なバリエーション
豊富な経験に裏打ちされた高度な技術を駆使し、シンプルなモデルから複雑時計に至るまで、設計から製作までの工程を一貫して自身の工房で行うことのできる独立時計師カリ・ヴティライネンさん。
彼の作品は、世界の時計愛好家や専門家に高く評価され、これまで何度もの「ジュネーブ・ウォッチメイキング・グランプリ」での受賞歴を持つ。
そのヴティライネンさんが先頃、来日。その作品について、直接、伺う機会を得た。
「今回、私が持参した『Vingt-8(ヴァントゥイット)』は、5本ありますが、そのうち3本がローズゴールドとホワイトゴールドのケースです。そして、ローズゴールドのモデルは、ムーブメントが古典時計好きによく好まれるフロストフィニッシュで仕上げています。これらのモデルは、どれもすべて自社製です。
このモデルは、2009年に開発を開始し、2011年に発表したものです。シングル・バレルで、独自のダブルホイール脱進機を装備し、ハック機能(秒針停止機能)は、2014年の春に追加しました。
また、こちらのモデルは、シルバーのダイアルに手彫りギョーシェを施し、ローズゴールドのインデックスをダイアルに配置しています。
もう一本はホワイトゴールドのケースに、装飾が異なるムーブメントを搭載しています。仕上げはコート・ド・ジュネーブで、木製のディスクでストライプ模様を入れています。木製のディスクを使うことで、ラインがとても柔らかく、肌理(キメ)の細かい模様を入れることができますが、ストライプを入れる前には、完璧に磨いておかないとなりません。
テンプにはカッパー・ベリリウムを使用し、ピンクゴールドのガルバニック(電解メッキ)処理を施しています。
ブラウン・ダイアルはガルバニック処理によるもので、3つのギョーシェ・パターンを使い分けています。インデックス部分は“クル・ド・パリ”で、インダイアルがバスケット模様、中央部には12分割したサンレイ模様を入れています。
もうひとつのホワイトゴールド・モデルは、ムーブメントは同じですがダイアルに異なった技術を用いています。それが波状のギョーシェ模様で、サブダイアルは12分割のサンレイ模様。ギョーシェの上には0.2mmのラッカーを塗って研磨仕上げを施し、光を受けると独特の艶が出て、角度によってその輝きが変わります。
この仕上げは特に難しいもので、できる工房は限られています。なぜなら研磨仕上げが難しいことに加え、環境問題によって、この工程を扱うための基準が厳しいのです。
このように『ヴァントゥイット』は見た目は同じでも、少しずつ改良しています」
18Kホワイトゴールドやローズゴールドなど、異なるゴールド素材を用いた『ヴァントゥイット』のバリエーションとGMT機能を搭載した『GMTー6』など、カリ・ヴティライネンさんの代表モデルがズラリと並ぶ。
Kari Voutilainen
カリ・ヴティライネン
1962年、フィンランド生まれ。自国の時計技術学校やスイスの「WOSTEP(the Watchmakers of Switzerland Training and Educational Program)」で時計技術の基礎を修得後、1989年から古典時計の修復や複雑機械式時計製作などを開始。2002年、“時計の谷”として知られるスイスのヴァル・ド・トラヴェール地方のモティエに工房を構え、独自開発によるタイムピースの製作を開始。2006年に独立時計師創作家協会(AHCI)に入会。2007年の『オブセルヴァトワール』を皮切りに、「ジュネーブ・ウォッチメイキング・グランプリ」で数々の輝かしい賞を受賞している。
三つの異なるギョーシェ・パターンを用いたダイアルを装備する『ヴァントゥイット』のホワイトゴールド・モデル。ブラウンのカラーはガルバニック処理によるものだ。
取材・文:名畑政治 / Report&Text:Masaharu Nabata
写真:堀内僚太郎 / Photo:Ryotaro Horiuchi
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