OMEGAついにマスタークロノメーター・モデルが定番化!「オメガ ムーンウォッチ」の現在 05
雑誌記事で存在を知った
「ムーンウォッチ」との出会い
私が初めて「ムーンウォッチ(スピードマスター)」のことを意識したのは1970年代の後半、雑誌「ポパイ」の紹介記事を読んだことだったと記憶しています。
「いつか僕もこんな凄い時計を手に入れられたなら…」漠然とそう思ったのですが、実際に「スピードマスター」を入手したのは1980年代の中頃。しかもそれは「プロフェッショナル」ではなく、1970年代に発売された派生モデル「スピードマスター オートマチック マークIII」でした。しかし、このモデルを手に入れたことが意外な出会いを生んだのです。
この「スピードマスター オートマチック マークIII」は当時、毎年通っていた東京・世田谷のボロ市で、アンティーク時計を大量に並べているおじさんから購入したのですが、そのおじさんが時計師の故・本間誠二さんでした。
後でわかったことですが、本間さんは高校卒業と同時に亀戸の第二精工舎に入社し、昭和24年から10年間、腕時計の組み立てなどに従事した後に独立し、時計の修理や販売を手掛けると共にモータースポーツの計時などの分野でも活躍した人物。古くからの時計ファンには1980~90年代の『世界の腕時計』での本間さんの連載でご存知かと思います。
そして、「スピードマスター オートマチック マークIII」の入手と本間さんとの出会いをきっかけとして私は時計の世界にますますのめり込んでいったのです。
そんな私が時計ファンにとってのマストともいうべき「ムーンウォッチ」を入手したのは1997年のこと。都内のあるアンティーク時計店で見かけたものの決断できず、翌日、ロケ先から店に電話して取り置きを頼み、やっとのことで購入しました。それが1964~67年に製造された「スピードマスター」三代目モデル(Ref.ST 145.003)。これにオリジナルのハーフエクステンション・ブレスレットを装着して愛用していましたが、最近、NASAの宇宙飛行士たちが着用の際に換装したJ.B.チャンピオンのメッシュ・ブレスレット復刻版を入手し、これに付け替えて着用しています。
インタビュー後に衝撃を覚えた
ラベル船長の言葉
アポロ13号のエピソードを中心にその「スピードマスター」を一躍有名にしたのがNASAの公式時計採用であり、「ムーンウォッチ」という名称は、NASAの月探査ミッションによって宇宙飛行士に着用され、月に到達したことにちなむものです。
その採用の経緯については以前の記事でも紹介したので省略しますが、簡単にいうとNASAのテストで最後まで生き残ったのがオメガだった、ということです。これはオメガのベーシックな技術が功を奏した好例です。当時の「スピードマスター」は、あえて言いますが、外装デザインを除けば、ごく普通のクロノグラフでした。精度も普通、防水性も普通、工芸的要素はなく、高級品でもありませんでした。しかし過酷なテストに生き残り、最後まで動いていたのはこれだけだったのです。いかにもオメガらしいエピソードだと思います。
そのオメガの「スピードマスター」が宇宙開発に大きく貢献した事実としてアポロ13号の奇跡の生還があります。
1970年11月13日午後9時7分、酸素タンクの爆発によって電気系統がダウンし月着陸を断念したアポロ13号は、地球への帰還を決断。大気圏再突入時に宇宙船の姿勢を修正するために14秒間、逆噴射する必要が生じましたが、カウントダウン用クロックは使用不能。そこで噴射時間を正確に計測し、再突入角度を決定するのに役立ったのが、宇宙飛行士が着用する「スピードマスター」でした。
この時、アポロ13号に搭乗し地球に生還したジェームズ・ラベル船長に、2015年の来日時にインタビューしたことは、今でも忘れられない思い出です。
この時、ラベル船長は実際に宇宙で起こったことと、映画「アポロ13」との違いや宇宙飛行士としての心構えなど興味深いエピソードを語ってくれましたが、衝撃だったのは、そのインタビューの後のことでした。
インタビュー後、「最後にひとつだけお願いがあります」と私がバッグからNASAのフライトスーツ(ツナギ服)を模したスペースキャンプ(米国アラバマ州にある宇宙飛行士の訓練を体験できる体験学習施設)で着用するスーツを取り出しサインをお願いしたときのこと。快くサインに応じてくれたラベル船長は、「君に約束してほしいことがある」と言うのです。「なんでしょう?」「このスーツを決してeBayで売らないでほしいんだ」
なんと御年87歳(当時)のラベル船長からこんな言葉が発せられるとは!
この時、私は「わかりました。このスーツは家宝にしますから決して売りません」と即答しましたが、実際、eBayで「James Lovell」と検索すると、サイン入り写真などが高額で出品されています。なんとも残念ですが、私はこのスーツを決してeBayに出品しませんし、今も大切に保管していることは言うまでもありません。
ファン必携の究極解説本
「ムーンウォッチ・オンリー」
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「ムーンウォッチ」ファンのためのバイブルとも呼ぶべき本がある。それが「Moonwatch Only The Ultimate Omega Speedmaster Guide」 。副題に“究極のオメガ・スピードマスター・ガイド”とあるように、「ムーンウォッチ」の変遷や歴代モデルのディテールに至るまで徹底的に解析した驚くべき書籍である。残念ながらすべて英文で価格も高い(約3万円)が、ムーンウォッチのファンなら手に入れておきたい充実した内容だ。ただし、この本の記載に影響されて「0000年のRef.000モデルの、この仕様はレアだよね」なんてことになって、ただでさえ高騰しているヴィンテージ価格がさらに上がってしまうのが心配だ。
オメガへの愛と憧憬が凝縮された
日本初のオメガ完全読本「オメガブック」
1997年の秋、それまでオメガを取材し原稿を書いていたが、その歴史やモデルの変遷をまとめた本が日本はおろか海外でもほとんどなかったことに業を煮やし、徳間書店グッズプレスの編集者担当(現在はGressive編集顧問の田中克幸氏)に企画書を提出して作ったのが「THE OMEGA BOOK(オメガブック)オメガ150年の軌跡」(1998年 徳間書店)。オメガのスイス本社に取材し、可能な限りの公式資料を提供していただいたが、当時は本社でも未解明な部分が多く、やや不正確な内容となってしまったのが心残り。できれば発掘された歴史的事実と最新情報を加えて改訂版を作りたいが、なかなか厳しい状況なのが残念。
協力:スウォッチ グループ ジャパン オメガ事業部 / Special thanks to:Swatch Group Japan OMEGA Division
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