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Romain Gauthier徹底した“磨き仕上げ”を高級機械式時計の必須条件とするローマン・ゴティエの信念

音と手から伝わる感覚も
作業状況の把握に必要

「ロジカル・ワン」の主要パーツのひとつ、香箱のブリッジ

面取り仕上げが施される2種類のパーツの前と後を比較する。それぞれ右側が仕上げ前、左側が仕上げ後の姿。右側はくすんだような状態だが、左側ではまるで鏡面のような輝きと艶がある。

  かなり乱暴な解釈になるが、要するにプラモデルの製作過程でランナーから切り離したパーツのバリを取り、より美しい完成形を目指すために各パーツの表面(特に角面や他のパーツとの接合接触面)をサンドペーパーで磨くことと同じだと、私は勝手に解釈した。しかしこの場合の工作精度はプラモデルの比ではない。



 渡された教材のブリッジはやや変わったレマン湖のような形状。まず20ミクロンのエメリーペーパーを使い角面の磨きを始める。さずが20ミクロンになると金属部への抵抗感がしっかりとあり、作業中は「ゴリッ、ゴリッ」という音が聞こえるほどだ。仕上がり具合を見てさらに9ミクロン、5ミクロンへとペーパーを変えていくが、この辺りになると抵抗感ははっきりと弱くなるのが感触でわかる。しかし目を凝らして研磨箇所を見てもよくわからない。感触がすべてのような気がする。



 さらに研磨する部分がブリッジの外縁部ならまだやりやすいが、内側にカーブしている部分、いわゆる戻り角になるとこれが難しい。戻り角の先端部はお手上げである。デヴォーさんはお皿を布で磨くようになんでもない様子で作業しているのに。15年のキャリアゆえのなせる技だ。


 最後に磨き部分に淡いブルー色のダイヤモンドペーストを付けたジャンシャンで仕上げとなる。ここまでの時間は1時間を少し超えたぐらい。


 要するに作業中の視覚による確認も大切だが、磨き中の指先の触覚に頼る部分が多いような気がした。セミナーの最後になると、ゴティエさんは「実際にはこの作業だけで8時間を必要とします」と述べ、パーツによっては17時間を必要とするものもあるという。ちなみに2013年発表の「ロジカル・ワン」は350個以上の部品で構成されている。


 説明も含めて2時間ほどのセミナーだったが、この手作業による磨きの困難さと要求される技術レベルの高さ、そして完成品としての時計の価値をどれほど高めるのか、そのための磨き作業の重要性の、ほんの数パーセントでも実感したセミナーであった。


 このような、はたから見ると極めて地味な作業を何年も何十年も続け、その技術が200年も継承されるジュウ湖の伝統にはため息が出る。高級時計とは、宝飾や複雑機構といった一般人でも分かる“派手な”要素だけではなく、磨きという縁の下の努力で成り立っていることを実感したのが、今回ローマン・ゴティエさんが開催した「マスタークラス」で得た成果だった。


取材・文:田中克幸 / Report&Text:Katsuyuki Tanaka
写真(東京・マスタークラス):吉江正倫 / Photos(Master Class in Tokyo):Masanori Yoshie
協力:スイス プライム ブランズ株式会社 / Special thanks to SwissPrimeBrands

INFORMATION

ローマン・ゴティエ(ROMAIN GAUTHIER)についてのお問合せは・・・

SwissPrimeBrands 株式会社
〒104-0045 東京都中央区築地2-15-19ミレニアム築地ビル 8F
TEL: 03-6226-4650


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