GRAND PRIX D'HORLOGERIE DE GENÉVE 2020混乱と混迷の世界状況下で開催 20年目のターニング・ポイントを迎えた「ジュネーブ・ウォッチメイキング・グランプリ 2020」 01
1957年より薄型時計を追求するピアジェ
その集大成が2020年GPHGの最高栄誉賞に輝く
無観客・ライブストリーム配信で
全世界に発表されたGPHG 2020
全世界に門戸を広げ“時計界の米アカデミー賞”とも呼ばれる「ジュネーブ・ウォッチメイキング・グランプリ(GPHG=GRAND PRIX D’HORLOGERIE DE GENÉVE)」(以下GPHG)。2001年の第1回から早くも20回目を迎えた本年の「GPHG 2020」は、新型コロナウイルス禍の影響により主に2点の変更がなされた。
まず、11月にジュネーブで開催される受賞作品の発表・授賞式に先駆けて行われる、ノミネート・モデルの海外巡回展示会が中止。一方、スイス国内での事前展示会は10月15日のラ・ショー・ド・フォン国際時計博物館(Musée international d'horlogerie )を皮切りに、チューリヒ、ベルン、ジュネーブへと続いた。
もうひとつは、11月12日の発表・授賞式をほぼ無観客で行った点。恒例のジュネーブ市テアトル・デュ・レマン(Theatre du Leman/レマン劇場)に集うのは、各時計会社の受賞者他審査員のみで観客席はほぼ無人。その代わりに空席は風船で埋め尽くされ、授賞式に登壇する受賞者も皆マスク着用、かつ当日の模様はオンラインのライブストリームで世界に配信された。
ちなみに主催母体のGPHGは2001年に創設され、2011年に公益団体として認可された財団で、ジュネーブ州と市の監督下にある。
展示方式等は例年とは異なるものの、他の規則・手順はこれまでと同様で、2020年版の規約(抜粋)によると、
(1)GPHGは国籍に関係なく、すべての時計ブランドに開放されている。
(2)参加資格は2019年5月以降、遅くとも2020年12月末までに商品化された時計のみ。
(3)参加ブランドは、遅くとも専用デジタル・プラットフォームを介し2020年7月31日までエントリーすること。
(4)参加ブランドは、各時計に入るカテゴリーを自由に選択でき、これらに分類されるひとつまたは最大7つの時計に参加可能。
通常は約350名のGPHGアカデミー会員から20~30名の審査員を選出し選考に当たるが、今年は審査員の拡大という異なる方式を採用。今回は数百本のモデルから84モデルが最終選考に残った。
2020年11月12日、ジュネーブのレマン劇場において、本年の最高賞である“金の針(AIGUILLE D’OR)” 大賞他全17の部門賞と、人物に与えられる“審査員特別賞(SPECIAL JURY PRIZE)”が発表。詳細は後述するが、ここでは“金の針”大賞と2020年の特徴について述べたい。
2020年の最も輝ける時計“金の針(AIGUILLE D’OR)” 大賞の栄誉に輝いたのは、ピアジェ(PIAGET)の「アルティプラノ アルティメート コンセプト(Altiplano Ultimate Concept)」。当モデルは1957年に厚さ9mmの手巻き式ムーブメント、Cal.9Pを発表して以来、薄型時計の開発に比類なき情熱を傾け続けるピアジェが到達した、ケース厚がわずか2mmという超薄型手巻き式時計である。シャビー・ノウリCEOは「『常に必要以上の良いものをつくる』というピアジェ家のモットーの下で、ピアジェに不可能なことはありません」と述べる。
取材・文:田中克幸 /Report&Text:Katsuyuki Tanaka