Watch Person Interview vol.62 チャペック CEO ザビエル・デ・ロックモーレル、チェアマン ハリー・グール インタビュー
異なるバックボーンを持つ3人の男達が
挑戦した21世紀チャペック復活物語
このチャペックを現代によみがえらせたのが、以下の3名のキイパーソン、ハリー・グール氏(Harry Guhl。Chairman)、ザビエル・デ・ロックモーレル氏(Xavier de Roquemaurel。CEO)、そして時計師のセバスティアン・フォロニエ氏(Sebastien Follonier。Watchmaker)である。
まずきっかけは創業者であるハリー・グール氏だ。
「最初はパテック フィリップでチャペックの存在を知り、強い興味を持ちました。2001年の頃です。私の妻がチャペックの出生地である、チェコ出身ということも影響したかもしれませんね。
私の専門はアート分野で、またロールス・ロイスなどの企業コンサルティングも行ってます。2007年から2008年にかけてチャペックの時計を探しましたが、叶いませんでした。当時はチャペックの法的所有者は存在せず、困難な手続きがありましたが、父の友人の伝手からザビエルさんと知り合いになったのです。彼は時計というよりもラグジュアリー・ブランドに精通した人物で、よりモダンな発想を理解している人物を探している私にとっては、幸いでした。しかもザビエルさんは時計の歴史と製造の理解者なのです。
ブランド創立において、なによりも最初の問題は財務関係です。資本がなければ会社の創立も時計の製造もできません」
ここで彼らは、時計業界では初となる試みに挑戦する。ザビエル・デ・ロックモーレル氏が後を継ぐ。
「クラウド・ファウンディングを行いました。家族や友人・知人から始まって、2015年8月から翌10月までの間で200万スイスフラン(約2億2800万円)の資金を調達できたのです」
クラウド・ファウンディング(CrowdFunding)とは、新興の起業資金調達などをインターネットを通じて広く募集する方法。資金力に乏しい起業家などの資金調達方法として、近年注目されつつある。
「巨大な資本グループによる資金調達もひとつの方法ですが、我々は個人的にチャペックに興味を持ち、投資の意思がある人を探す道を選びました。出資者の中にはリバプールのサッカー選手もいますよ」
資金調達前の2013年10月21日、すでに彼ら3人は新チャペックの方針を決定していた。それは「もし、チャペックが存続していたのなら、この現代でどのような製品を発表するのだろうか?」(ザビエル・デ・ロックモーレル氏)という一点。
そこで彼らは膨大な文献や数少ない現存品の調査に入り、新生チャペック第1号モデルのアイデアを探し求める。
「チャペックの生涯生産個数は1万個以上ありましたが、現存するのは500個以下。そのほとんどが個人所有ですが、いちばん多く所有しているのはパテック フィリップ・ミュージアムでしょう」(ハリー・グール氏)
「チャペックは時計の機能のみならず、総合的な意味で“時計美”を追求した人です」(ザビエル・デ・ロックモーレル氏)
こうして新生チャペック第1号モデルの範としたのが、前述の懐中時計「No.3430」である。これは5時と7時に小ディスクを備えるシンメトリックな配置を成しながらも、上下の構成では少し下方に位置するという点でアシンメトリックというユニークなレイアウト。ここに完璧さを崩したサプライズがあり、これこそがチャペックの時計美があるとザビエル・デ・ロックモーレル氏は強調する。
さらに7時はスモールセコンドだが、5時の小ディスクは1本の針で曜日とパワーリザーブを表示するダブルハンド表示というユニークな機構を見せている。
取材・文:田中克幸 / Report&Text:Katsuyuki Tanaka
写真:江藤義典 / Photos:Yoshinori Eto
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