Watch Person Interview vol.60 常に“革新”を追求する精神から誕生した時計ストラップのネクスト
ジャン・ルソーが新たに開発した「防水アリゲーター」。写真を見ても分かるように、確実に水を弾き、そのまま放置しても革に浸透しない高い撥水性能を持つ。まずは時計ストラップに用いられるが、今後は他のプロダクトへの応用も期待できる。
海外のマーケットではカーフなどがメインだが、高級な素材が好まれる日本ではアリゲーターが圧倒的人気。「時計はファッションと異なり、不変かつ文化的にいいものを守りたいという風潮があります。アリゲーターが長く好まれる理由も、そういったところにあると思っています」(ボルディエ氏)。ブティックでは最高級とされるミシシッピー アリゲーターも扱い、好みの部位を選んでオーダーもできる
ブティックの奥には工房も併設されており、オーダーストラップはここで製造される。顧客の様々な要望に応えるため、700種類もの素材に加え、銀座のアトリエには150種類の、フランス本国には1000種類以上の豊富な型も用意している
ジャン・ルソーでは、エンドユーザーに向けたジャン・ルソーブランドの製品展開に加え、以前からさまざまな時計ブランドのOEM事業も行っている。
「時計ブランドからは、各ブランドが実施する耐久性や耐水性などのテストをクリアでき、なおかつ革の質感や上品な雰囲気を損ねない素材の開発を求められていました。そして2016年の今年、ようやく完成したのが、防水性を備えたアリゲーターです」
耐水性の問題を解決するために、ジャン・ルソーではラバー製ストラップも用意しているが、高級時計のイメージにマッチする、新たな素材を模索し始める。
「時計ストラップの素材の中で、アリゲーターの人気は長く続いています。そこで、水に強いアリゲーターを探し、8カ月のリサーチ期間を経てようやく良い素材に巡り合えました。通常、防水素材はスプレーなどで革の上に層を作るのですが、これは違います。初めに革をトリートメントした後に、芯を強くしてしばらく寝かせ、次にその上の層を強くして再び寝かせる…という工程を繰り返します。一般的な革の製造は3日くらいなのですが、防水アリゲーターは製造に約1カ月を要します」
もちろん、ストラップはステッチが施されるので、縫い目から水が浸入することを考えると完全なウォータープルーフではない。
「さすがに海やプールなどでは使用できませんが、手を洗う時や雨が降っている時は、気にせずご使用いただけます。しかし何より、水に強い特性を持ちながらも、エレガントな雰囲気で質感もとてもソフト。しかもナチュラルな素材なので、エイジングを楽しめる点も魅力だと考えています。やはり、時計ブランドからのリクエストに応えるためには、革新性が大事。それなくしては、ジャン・ルソーはなくなるでしょうね。OEM事業のみだと、ブランドの意見だけに応えることになりますが、ジャン・ルソーはブティックを展開しているのでエンドユーザーの声も拾いやすい。革新的な製品を作り続けていく上で、これはとても大切なことなのです」
1999年にCEOに就任しブランドのポテンシャルが分かってくると、ストラップのみならず、広く革小物への展開も見えてきたというボルディエ氏。現在は、財布やカードケースに加え、ブリーフケースも手掛けている。
「今はまだ、時計ストラップ・ブランドというイメージが定着していますが、今後はもっと革小物のバリエーションを増やしていきたいという目標があります。ゆくゆくは“レザーブランド”として、ジャン・ルソーの名をもっと浸透させたいですね」
取材・文:竹石祐三 / Report &Text:Yuzo Takeishi
写真:江藤義典 / Photos:Yoshinori Eto
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