Watch Person Interview vol.57 既存モデルを改良しつつ さらなる高みを目指す製品開発
インタビュー当日、エドゥアルド・メイラン氏が着用していたのは「エンデバー パーペチュアル・カレンダー」のフュメ・ダイアル・モデル。このダイアルは“ファンキーブルー”と呼ばれるカラーで、H.モーザーならではのグラデーション・カラーが美しい。
2016年1月に発表され、全世界で話題となった「スイス アルプ ウォッチ」。某有名スマートウォッチを機械式ムーブメントで再現したもの。「研究開発期間200年以上」、「革命的な動力源(ゼンマイ)で100時間以上駆動」、「アップグレード不要」というスマートウォッチにはない特徴を備える。手巻き、Cal.HMC 324、27石、パワーリザーブ約4日間。サイズ縦44.0×横38.2mm。世界限定50本。3,000,000円(税抜)。
2016年は1月にジュネーブのSIHHに出展し、3月のバーゼルワールドでも例年通り、独立した展示を行ったH.モーザー。彼らはこれから、どの方向に向かうのだろうか?
「H.モーザーが目指すのはシンプルと複雑、その両方です。まず今ある製品を大事にしつつ、各ムーブメントの構造を再検討し、さらに品質を向上させるべく研究を続けています。
今回、新しいビッグデイトを発表しましたが、構造を再検討し、共通部品を増やして生産の効率化を図りました。
さらに、従来のムーブメントをベースとして複雑モデル、つまり新しいクロノグラフやリピーター、ソヌリの開発を考えています。
これらの開発は3年では難しいので、発表できるのは5年後かもしれません。とはいえ、単に複雑なら良いわけではなく、実用性があって、あくまでも使える時計であることが大事です。
とにかく父はクロノグラフが大好きで、ヴィンテージの素晴らしいクロノグラフをたくさん収集しているので、ここからインスピレーションを得ることもあります」(エドゥアルド氏)
「そう、時計も服と同じように流行が巡ってくるものです。だから私はヴィンテージ・ウォッチのコレクションを眺めながら、新しいアイデアを考えているんです。
こういった昔のクロノグラフや、H.モーザー、そしてメイラン家の作った古い時計を見ながら、その構造やデザインを新しい時計にフィードバックしています」(ジョージ・ヘンリー・メイラン氏)
父ジョージ・ヘンリー氏が所有するヴィンテージ・ウォッチのコレクション。これが時計愛好家としては非常に気になるのだが…。
「私の主要なコレクションはメイラン家の名が付いたものです。それも含めて80個ぐらいでしょうか? 中には、だんだん価格が上がってきたものもありますね」(ジョージ・ヘンリー・メイラン氏)
ヴィンテージ・ウォッチについては、エドゥアルド氏も大いに興味を持っているようだ。
「最近、ファベルジェ(注:19世紀、ロシア皇帝の寵愛を受けた宝石商。宝石で飾られ、精密なからくり仕掛けが施された『インペリアル・イースター・エッグ(別名:ファベルジェの卵)』で知られる)の時計をオークションで落札しました。それはH.モーザーのムーブメントを搭載したテーブル・クロック。これも機会があれば、皆さんにお見せしたいですね」(エドゥアルド氏)
未来を見据えつつ、過去の歴史も尊重するH.モーザー。そのさらなる展開に目が離せない。
取材・文:名畑政治 / Report&Text:Masaharu Nabata
写真:堀内僚太郎 / Photo:Ryotaro Horiuchi
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