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IWC独立国家の防衛”とは? 1990年代、日本にこの意味を問い質した話題作『沈黙の艦隊』、ついに実写映画化! 01

戦後の繁栄の陰であえて放置し続けたテーマを
今、改めて我々日本人に問い質す作品

(c)かわぐちかいじ/講談社 (c)2023 Amazon Content Services LLC OR ITS AFFILIATES. All Rights Reserved.

 1990年8月2日、中東国家イラクの共和国防衛隊は東南に位置する隣国クウェートに侵攻、同国全土を約6時間で制圧・占領し傀儡政権のクウェート共和国を擁立した。この事態を受けて国際連合安全保障理事会は武力行使容認決議を可決、ここに米軍を中心とする多国籍軍が構成され、翌1991年1月17日に「砂漠の嵐作戦」が開始、ついに第1次湾岸戦争が始まる。多国籍軍には米国を中心に英国、フランス、ドイツ、デンマーク等の欧州国とサウジアラビア、エジプト等の中東国の計30カ国が参加した。

 一方の日本は米通貨で130億ドルもの戦争拠出をしながら、憲法第9条を理由に自衛隊の参加は取り止めに。これが日本の国際的な孤立を招き、当時の米アーミテージ国務副長官は柳井駐米大使(当時)に対して「ショー・ザ・フラッグ(日の丸を見せろ)」と発言、彼の発言は日本政府や省庁に相当なトラウマとなったと言われている(確かにアーミテージ氏の発言は、当時の日本の新聞や雑誌、TV等のメディアで大きく報じられたことは記憶している)。この湾岸戦争を契機に、国際貢献への軍事力の行使と独立国家としての防衛とは何か? という議論が連日のように国会やメディアで盛んに行われた(以上、Wikipediaより要約)。


 日本に一大論争を巻き起こした第1次湾岸戦争に先駆けること3年前の1988年10月。雑誌『モーニング』(講談社)で始まり、1996年に終了するまで足掛け9年間も同誌に連載された、かわぐちかいじ氏の作品が『沈黙の艦隊』である。当時、この作品が社会現象になるまで日本に広く深く受け入れられたのは、単なる潜水艦戦やポリティカル・フィクションに止まらない深いテーマを、『沈黙の艦隊』は当時の日本と日本人に突きつけたからだ。戦後、米国の“核の傘”の影響下で経済最優先の道を進み、結果として国際政治でのインテリジェンスや核の保有、国家防衛など戦後の日本が“見て見ぬふりをしてきた”諸問題への回答を求めたのである。このため当作品は大きな反響を呼び、ひんぱんにメディアで報じられ、国会質問にも使われるなど、まるで3年後の日本の予言書であったかのようである。しかし、これは過去の話ではなく、2023年の今なお日本と日本人に問い掛けられているテーマだ。だからこそ今、映画『沈黙の艦隊』は登場した。


(c)かわぐちかいじ/講談社 (c)2023 Amazon Content Services LLC OR ITS AFFILIATES. All Rights Reserved.

実現不可能と言われた実写化に成功した、映画『沈黙の艦隊』


 アニメやラジオドラマでは作品化された『沈黙の艦隊』だが、物語のスケールの大きさと潜水艦戦の描写など、構成の困難さと当時の映像技術的な理由で実写化は不可能と言われてきた。しかし2023年、ついに実写化に成功した『沈黙の艦隊』が9月29日(金)より東宝系全国劇場にて公開される。

 作品ストーリーは当ページに設けてある別枠をお読み頂きたい。要約すると、日米政府が極秘に建造した最新型高性能原子力潜水艦「シーバット」。当艦は日米政府の密約により日本近海での海難事故を装った水面下で、密かに米国から海上自衛隊のある潜水艦部隊へと引き渡される。核ミサイルを搭載した攻撃型原子力潜水艦だ。しかし、受領した側の海上自衛隊潜水艦部隊は当艦をシージャックし、失踪する……。本作品は「シーバット」を追う米国第7艦隊と、唯一単艦で追跡する日本の海上自衛隊潜水艦との追撃戦や艦長たちの心理戦、さらに日米双方の政府・官僚たちの謀議などを網羅したアクション・ポリティカル・エンターテインメントである。なお、映画の公開に合わせて講談社より原作『新装版 沈黙の艦隊』全16巻が刊行される。ちなみに第一巻の表紙(上の写真参照)左下に記された副題の「THE SILENT SERVICE」とは「潜水艦戦力」の意味。


 正直、2時間程度の上映時間では収納不可能な内容と思われたが、監督の吉野耕平氏、脚本の髙井光氏は豪快な手腕で一気にまとめ上げた。潜水艦戦はいわば“水中のチェス”のようなもので、頼りはソナーの音のみ(実際、ある国の原子力潜水艦員のソナー係は部隊内で“黄金の耳”と呼ばれている、と聞いたことがある。ソナー係のシーンは本作品の見どころのひとつ)、後は差し手の艦長同士の腹の探り合いだ。同時にその冷静で冷徹な駆け引きは日米両政府内でも進行、これを吉野監督は緩急自在の編集で巧みにまとめあげている。その“急”の場面である潜航・交戦中の潜水艦や洋上艦隊の描写をトップレベルのVFXとCGチームが創り上げた(映像のみならず“音”にも集中して頂きたい)。また主演の大沢たかお(艦長 海江田四郎役)はプロデューサーまでも兼務、並々ならぬ気迫で当作品に臨んでいる。

 本作品の製作は日本の劇場版映画が初となるAmazonスタジオ、また防衛省・海上自衛隊の協力により邦画では初となる実物の潜水艦の撮影に使用している。この辺りの映像は軍事評論家や専門誌、マニアは必見であろう。同時に潜水艦戦の描写も、彼らのような専門家の評価が楽しみである。


 鑑賞中は言うに及ばず、鑑賞後も深く長く考えるべきテーマを内包した重厚な作品が『沈黙の艦隊』。一応“エンターテインメント”と銘打っているが、これは1990年代に日本と日本人へ向けて放たれた「独立国家の防衛とは何か」というテーマを、今再び2020年代に生きる我々へ向けられた1本の矢である。


―物語―

 日本の近海で、海上自衛隊の潜水艦が米原潜に衝突し沈没した。艦長の海江田四郎(大沢たかお)を含む全76名が死亡との報道に衝撃が走る。だが実は、乗員は無事生存していた。事故は、日米政府が極秘に建造した高性能原潜「シーバット」に彼らを乗務させるための偽装工作だったのだ。米艦隊所属となったシーバット、その艦長に任命されたのが海自一の操艦を誇る海江田であった。

 ところが、海江田は密かにシーバットに核ミサイルを積載しており、突如反乱逃亡。海江田を国家元首とする独立戦闘国家「やまと」を全世界へ宣言した――。「やまと」を核テロリストと認定し、太平洋艦隊を集結させて撃沈を図るアメリカ。アメリカより先に「やまと」を捕獲すべく追いかける、海自ディーゼル艦「たつなみ」。その艦長である深町(玉木宏)は、過去の海難事故により海江田に並々ならぬ想いを抱いていた……。

 大義か、反逆か。日米政府、海上自衛隊、米海軍までをも運命の荒波に呑みこむ、海江田四郎の目的とは――?


2023年9月29日(金) 全国東宝系にて公開


出演:大沢たかお 玉木宏 上戸彩 江口洋介ほか
原作:かわぐちかいじ「沈黙の艦隊」(講談社「モーニング」)
監督:吉野耕平
脚本:髙井光
音楽:池頼広
主題歌:Ado「DIGNITY」(ユニバーサル ミュージック) / 楽曲提供:B'z




協力:IWC / Special thanks to:IWC

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