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A. LANGE & SÖHNE古代ギリシアの英雄名を顕彰するA.ランゲ&ゾーネ6番目の新ファミリー「オデュッセウス」完全解剖! 02

神々が今よりも人間に近い存在だった古の時代
オデュッセウス誕生の話

オデュッセウスとポリフェムス

Arnold Böcklin - Odysseus and Polyphemus 《オデュッセウスとポリフェムス》
トロイア10年戦争終結後、故国イタケー島への帰路早々に遭遇したキュクロープス人の国に住むひとつ目巨人、ポリュペーモス。オデュッセウスの機転で一行は島を脱出するも、目を潰され怒り心頭のポリュペーモスが彼らに巨石を投げている様子を描いた絵画。19世紀末の芸術活動のひとつで、文学、神話、聖書を題材にした世界観を描く象徴主義の代表者のひとり、スイス・バーゼル出身の画家アルノルト・ベックリン(Arnold Böcklin 1827~1901)作。制作年は1896年。ボストン美術館所蔵。

オデュッセウスの冒険譚の前哨となる
トロイア10年戦争とは?

 欧米ではひとつの文化・教養として深く親しまれている『オデュッセイア(オデュッセウス物語)』。日本では今ひとつなじみがないと思われるが、有名なエピソードの何編かは子供時代に両親の読み聞かせや、少年少女世界文学全集等で触れられた方もいらっしゃると思う。ここでランゲが命名したその背景として、『オデュッセイア』をおさらいしたい。なお参考文献として岩波少年文庫『ホメーロスのオデュッセイア物語 上・下』(バーバラ・レオニ・ピカード作 高杉一郎訳 岩波書店刊)を採用し、固有名詞等も当文献に依拠する。


『オデュッセイア』は古代ギリシア時代の紀元前8世紀末の吟遊詩人、ホメーロスを源とし伝承された一大叙事詩で、内容は以下のようなものである(作者がホメーロスひとりかについては諸説有り)。

 まず時代は、神々の世界が今よりもはるかに人間界(古代ギリシア人)に近い存在であった頃。神の三兄弟の内、全能の神ゼウスは大地と空、ポセイドーンは海と川、ハーデースは地下にあるすべてのものを治め、ゼウスの妻ヘーラーは神々の女王であった。その他皆さんもご存知の芸術と学問の神アポローン、愛と美の女神アプロディーテー、知恵の女神アテーナーなどが揃い、彼らは時として人間界の様子を見、必要に応じて助言やあるいは罰を下す存在である。

 また、ここでの世界とは大雑把であるが現在の地中海並びにその沿岸部だけと考えて差し支えない。すべてはこの世界で起こる。

 簡潔に記すと、これは

「船団を組み多くの配下の将兵と共にトロイア戦争に参加した、イタケー島の王オデュッセウスが、10年を要した戦争の終結後、さらに10年の歳月をかけて様々な困難苦難に立ち向かいながら故国へ帰還する冒険物語」である。

 この間、故国イタケー島に残された王妃ペーネロペイアには、諸国から100人以上の求婚者がオデュッセウスの館を訪れ、彼の後釜を狙うべく日夜館で暴飲暴食の限りを尽くす。その中でオデュッセウス出征時はまだ幼児であったものの既に立派な若者であり、父の気質と勇気、知力を受け継いだ息子テーレマコスは、そんな連中を苦々しく思い父の帰還を待ち続ける。

 ざっくりとした表現だが、この一大冒険物語は映画『スター・ウォーズ』(1977年~ 米国)シリーズや、『ドラゴンクエスト』等のファンタジーゲーム等の始祖である。生涯中一読の価値は十分にある。


A. ランゲ&ゾーネ「オデュッセウス」3時からのサイドビューでまず目に入るのが、両先端が絞られた小舟のような形をしたサテン仕上げのプッシュボタンスペース

3時からのサイドビューでまず目に入るのが、両先端が絞られた小舟のような形をしたサテン仕上げのプッシュボタンスペース。両先端部のプッシュボタンは固めに調整されており、意識して押さなければ作動しない。全体がケースサイドより盛り上がり、簡単に言うと天頂部を少し削り取った三角棒のような形状である。


従来のコレクションとは全くことなる発想で誕生した
ランゲ初のステンレススティールケース

 前述した古代ギリシアの英雄名を採用した新ファミリー「オデュッセウス」は、A. ランゲ&ゾーネのレギュラーコレクションとしては初となるステンレススティール製ケースを採用。基本コンセプトが他のコレクションとは全く異なるラグジュアリー・スポーティウォッチゆえに、ケースやリューズ、ブレスレット等の外装部も他のランゲとは異次元のアプローチが為されている。



 3層構造の直径40.5mm、厚さ11.1mmのケースは、サイドから見ると少し盛り上がっているデザイン。どちらかと言えば丸みのある柔らかな曲線構造の印象が強い従来のランゲと全く異なるのは、立体的・直線的かつ細かな傾斜を加えたケース構造にある。これを端的に表現したのが3時側から見るケースサイドと、ラグ並びにブレスレットの形状だ。これらには細かな角度が随所に付けられており、各々にポリッシュとサテン仕上げによる多面体構造を呈している。その作業は実にきめ細かい。



 ケースサイド3時側には、ダイアルに表示されるアウトサイズの日付(3時)と曜日(9時)用のふたつの修正ボタンが、まるで埋め込まれているかのように設置されている。これらを覆うような形で側面が張り出している構造で、さらに三角形の張り出し面がピラミッドのような形状に見える。

 ランゲのような古典主義とも言える時計会社にしては大胆な構造を採用したものだが、おそらくこれはふたつの作動ボタンを覆うことによる誤作動防止が目的ではないかと思われる。事実、防水仕様のふたつの作動ボタンはケースサイドにフラットに埋められており、かつ意志を持って押さない限り作動しないほどの抵抗感がある。このアウトサイズデイト(並びに今回はシンメトリック・デザイン成立のため曜日表示も大型化)は、今回の「オデュッセウス」のデザイン・アイコンと言えよう。それゆえに安全性と確実性を確保する機能を、スポーティな設計思想で実現しようとする目的から生まれたデザインと思われる。



 これら以外の特徴は、ランゲ初のねじ込み式リューズの採用による120m防水の実現と、最大7mmまでの調整が可能な落下防止機構付きフォールディングバックル&ブレスレットだ。特に後者は開発に4年間を要し、バックルに刻印された円形の「A. LANGE & SÖHNE」ボタンを押すことでブレスレットの長さを微調整する。また真正面から当モデルを見た時、ラグと同じ幅でブレスレットが始まり、その後一気にシェイプされていく様子が分かる。この力強い見え方も従来のランゲには無かった新味だ。

 以上のようにケースとリューズ、ブレスレットからだけでも、これまでのコレクションとは発想の立脚点が異なることを主張するのが「オデュッセウス」である。



取材・文:田中克幸 /Report&Text:Katsuyuki Tanaka


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