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Watch Correspondence from Germany Vol.1  時計師の“手”による作業にザクセンの伝統が息づく

時計師の“手”による作業にザクセンの伝統が息づく

  設計からプロトタイプ製作まで、モデルの開発をひとりでこなしているマルコ・ラング氏。“ドレスデン製の時計”を強調する彼は、ドレスデン美術館に展示されている美術工芸作品からインスピレーションを受けることも多いという。そのひとつの例として、1万年以上もロシアの永久凍土層で眠っていたマンモスの牙を使用した、25点限定のムーブメント・プレートがある。これなどまさに宝物館の展示物のようだ。


  そして博物館の展示品から啓発を受けたもうひとつのモデルが、2015年の新作であるブルーのダイアルが印象的な「ヨハン・シャンプルーブ(Johann Champluve)」。


「これは展示品である宝石箱から発想を得ました。シルバーのダイアルの表面に、鮮やかなブルーの透明エナメルを施すことによって、下地に施された手彫りによるエングレービングが浮かび上がるのです」


  一方のムーブメントであるが、シンプルなモデルから複雑なモデルまで、キャリバーは6タイプ存在する。搭載する機構には大きな違いがあるが、共通する特徴をいくつか挙げてみよう。


  それが、ちらネジ付きテンプ、スワンネック型精密調整機構、テンプ受けのハンドエングレービング、そして梨地仕上げの古典的なブリッジ(受け)やプレート(地板)の仕上げ。


  これらの仕様により全体の印象は華やかだ。また、通常の鏡面仕上げよりも手間のかかるブラック・ポリッシュ(鏡面仕上げの一種。ある角度から光が当たると黒く見える研磨技術)で仕上げられたコハゼ(主ぜんまいを収めた香箱が逆転するのを防止する部品)を装備。さらにアンクルの重さを平均化して一定の力をテンプへ伝達するムスターシュ型アンクルは、懐中時計時代には最上級の高級時計に採用されていたが、現在、腕時計に用いるブランドは極めて希だ。


  またキャリバーVとVIには、通常のシリンダー型ドテピン(アンクルさおの往復運動を制御する2本の支柱)ではなく、より精密に位置を設定できる偏心型ドテピンが使用されている。


  このようにラング&ハイネの時計は、ドレスデンのミュージアムに展示される手工芸品の要素を引き継いでいる。


「私は、マニュファクチュールという名のインダストリー(産業)ではなく、時計を作るにあたって一番大事な道具である“手”を使ってのハンドウェルク(職人芸)でありたいのです」


  そう語るラング氏の表情からは、ドレスデンの歴史と伝統を受け継ぐ時計師としての強固な意志を見て取ることができるはずだ。


取材・文:宮田ツィマー侑季 / Report&Text:Yukie Ziemer-Miyata


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