2023 New Model ｜ RESSENCE
2023年レッセンス新作　タイプ 1 ラウンド M

【編集顧問田中克幸ピックアップ】

　6つのファミリーで構成されるレッセンスのコレクション中、「Type 1」のラウンドケースに登場した「タイプ 1 ラウンド M（Type 1 Round M）」。1枚のグラフィックアートのようなダイアルは、近くで凝視しなければ複数のダイアルが回転する時計には見えない。この平面性もレッセンスの特徴のひとつだ。小型のサテライト・ダイアルは“時”（グリーン）、“秒”（イエロー）と“曜日”（レッド）を表示し、ホワイトの大型“分”ダイアル（ブルーの外周部インデックスを指針しつつ回転）上に収まりつつ各々回転する。まるで大型のメリーゴーラウンドに乗る回転式コーヒーカップを見下ろしているような感覚に陥る。自動巻き。

Type 1 Round M
タイプ 1 ラウンド M
ケース径：42.7mm
ケース厚：11.0mm
ケース素材：チタニウム(グレード5)
防滴性：1気圧(10m)
ストラップ：ライトグレーのラバーストラップ(20/20mm)
ムーブメント：自動巻き、Cal.ROCS 1(ETA2892ベース)、毎時28,800振動(4Hz)、部品数212個、40石、36時間パワーリザーブ
仕様：時・分・秒表示、曜日表示、重量64g(ストラップとバックル含む)
価格：2,772,000円(税込)

※価格は発表当時の情報になります。最新情報につきましては公式サイトをご確認ください。

極めてフラットなダイアルもレッセンスの特徴。接近してもダイアル全体の動きがアニメーションのように見える、実に不思議な運針（ディスク）情景だ。搭載ムーブメントはETA2892をベースに、レッセンスの開発モジュールを組み込んだCal.ROCS 1.3。“ROCS”とは“Ressence Orbital Convex System（レッセンス・オービタル・コンベックスシステム）”の略で、“Orbital”は“軌道の、環状の”、“Convex”は“凸状の、出っ張った”の意味。これはレッセンスが特許を取得した独自のパワーユニットである。“Convex”は傾斜のついたダイアルか、ドーム型サファイアクリスタルガラスのことを示しているのだろう。ご覧のようにリューズは存在せず（秘密はケースバックにあり。別写真で説明）、古典腕時計のようなワイヤーラグを付けた目的は、ラウンド形状をより浮き立たせるためと思われる。創業者でありインダストリアル・デザイナーのベノワ・ミンティエンス氏は、レッセンスのデザイン・エッセンスを“ペブルデザイン（pebble design）”と説明。“pebble”とは、「川の流れや潮の満ち引きにより、長い年月をかけて自然に形成された丸い小石」を意味する。このモデルも、まさに川原や海辺で拾った小石のようだ。

至近距離から見ると、ようやくメインの分ダイアルと時・秒・曜日の3つのサブダイアル（レッセンスではこれを“サテライト・ダイアル”と呼称する）のアウトラインが見えてくる（写真はグリーン＝“時”と、レッド＝“曜日”のサテライト・ダイアル）。各ダイアルと針はホワイト・ペイントで仕上げられ、各々の針の先端やリング形状のインデックスはパステル調のグリーンやレッド、イエロー、ブルーで彩られている。ベースとなる凸面状のダイアルはジャーマンシルバー製。時・秒・曜日の3つの小さなサテライト・ダイアルは偏心配置され、傾斜角度は時表示サテライトが3°、秒と曜日サテライトは4.75°になる。インデックスはエングレーブされた後に、グレードAのスーパールミノバが充填される。

「Type 1」のラウンドケースの周囲にリューズは存在せず、よって左右どちらの腕にもバランス良く収まる。ケース本体は左右完全なシンメトリックを構成する一方、ダイアルにはサテライト・ダイアルを偏心配置。時刻合わせとゼンマイの巻き上げは、ケースバックにはめ込まれた弓形のハンドルを起こして行う（写真。ケースバックの上部）。搭載されるCal.ROCS 1.3のパワーリザーブは、他のレッセンスモデルと同じ36時間。防水ではなく防滴構造1気圧。“防滴”とは「水滴の侵入を防ぐ」という意味で、「外界から水が侵入するのを防ぐ」“防水”とは異なる（性能面では防水機能の方が高い）。防滴構造をレッセンスのベノワ・ミンティエンス氏は“splash residence（スプラッシュ・レジデンス）”と表現。ケースはグレード5のチタンを採用し、重さはわずか64g。つまりLサイズの殻付き卵（平均64～70g）とほぼ同じだ。