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2020 Column2020年 新作情報「時を巡る旅」コラム|危機を乗り越え時代の転換に即した時計見本市とジャーナリズムを

危機を乗り越え時代の転換に即した
時計見本市とジャーナリズムを

 時計界が今、未曾有の危機にさらされています。主な原因は新型肺炎の世界的流行ですが、背景にはジワジワと進行してきた大型時計見本市離れの動きがあるはずです。


 まず2020年2月4日にスウォッチグループ傘下6ブランドにより3月4日から6日まで開催予定だった展示会「タイム・トゥ・ムーブ2020(Time to Move 2020)」の中止が決定。2月27日には従来「SIHH(Salon International de la Haute Horlogerie)」と呼ばれていたジュネーブの展示会「ウォッチ&ワンダー ジュネーブ(Watches & Wonders Geneva)」(4月25~29日)の中止もアナウンスされました。しかも2月28日には「バーゼルワールド2020(Baselworld 2020)」(4月30~5月5日)が2021年1月への延期を発表。これは実質的な中止でしょう。また、他の展示会と同様、4月にジュネーブにて開催が予定されていたフラン クミュラーグループによる独自展示会「WPHH」の中止も決定しました。


 さらにバーゼルワールドから離れ、各国で独自発表会(彼らはロードショーと呼んでいます)の開催を3月30日に予定していたブライトリングでは、新型肺炎の影響を受けてロードショーの開催を断念し、各媒体を個別に招いて新作を紹介する型式(すくなくとも日本では)に変更しました。


 我々にとって、これら時計展示会・見本市の中止は大問題です。時計ジャーナリズムに関わっている以上、スイスで開催される大規模時計見本市の取材は必須です。Gressiveも創刊以来、「時を巡る旅」として情報を発信してきました。


 ただ、すでに述べたように時計見本市の中止の背景には、年に一度の大規模見本市で新作を発表するスタイルが時代にそぐわなくなったことがあります。その理由はインターネットの普及とデジタル・メディアの進化。ここが2003年にSARS(重症急性呼吸器症候群)の影響でバーゼルワールドの規模が縮小された事例と大きく異なる点です。


 我々がスイス現地取材を始めた1990年代初期、バーゼルフェアは主に商談の場であり、プレス対応は補助的存在に過ぎませんでした。しかし、やがて機械式高級時計が本格的に復権するとマスコミの存在価値が上がり、プレス対応も手厚いものへ変化しました。


 同時に1991年に始まったSIHHの参加ブランドが増加して存在価値を増し、バーゼルとジュネーブという二大時時計見本市の対立構造が顕在化。設備の充実と向上を求めてバーゼルは幾度となく会場の整備や建て替えを行った結果、プレスやバイヤー、リテーラーなど来訪者にとって快適性は向上したものの、出展料が上がってブランドの負担が増加するなどの問題が発生したと考えられます。


 一方でネット環境が予想を超えて発展し、今やギガクラスのデータも瞬時に転送できます。となると世界各国から新作時計のデータをもらうためだけに(我々は自社で撮影しますが)スイスに出向く必要があるのかという疑問も湧きます。


 事実、大規模時計見本市から離脱するブランドは年を追って増えていました。2019年のバーゼルワールドではスウォッチグループが出展を停止。ハイエンドな6ブランドはスイスで独自に展示会を開催し、他のブランドは各国で個別に新作発表会を行うスタイルに変更されました。また、2020年のSIHHではオーデマ ピゲとリシャール・ミルが出展を停止することが1年以上前に発表され、バーゼルワールドではブライトリングやセイコーが出展停止を表明していました。


 これらの変化はいわば時代の必然でしょうが、祝祭としての時計見本市の消滅には一抹の寂しさも感じます。


 そもそも交易の要衝であるバーゼルで1917年に始まったスイスの産業博覧会「スイス・マスターメッセ・バーゼル(muba)」を原点とし、その時計部門が独立してバーゼルワールドに発展したことを思えば、近年のイベント重視で華美な展示会は本来の姿とは言い難かったはずです。


 その意味でバーゼルワールドに限らず他の時計見本市も今一度、原点に立ち返って発表の型式を再考する必要があるはずですが、記事の配信と閲覧の主体がデジタル・メディアに移行しつつある現状を考えると、2020年の状況が今後の時計界における雛形となる可能性は大いにあります。


 とはいえ、我々の「時を巡る旅」はまだ終わったわけではありません。ブランド個別の発表会やウェブ発表が主体であっても、情報を整理し、見やすくわかりやすく伝えることはジャーナリズムの使命なのですから。


  • スイス・マスターメッセ・バーゼル会場

    1917年の「第1回 スイス・マスターメッセ・バーゼル(Schweizer Mustermesse Basel)」会場。1931年にはその時計部門が独立したパビリオンを構え「スイス時計見本市(Schweizer Uhrenmesse)」となった。写真は1920年代の会場。

  • 1960年代のバーゼルフェア

    大時計を掲げた新しいホールも登場し、多くの来場者で賑わった1960年代のバーゼルフェア。バーゼルワールドへの名称変更は奇しくもSARSの影響を受けた2003年のことだった。

文:名畑政治 / Text:Masaharu Nabata

Gressive取材スタッフ紹介

  • 名畑 政治

    名畑 政治
    Masaharu Nabata


    Gressive編集長。1959年、東京都生まれ。時計、カメラ、ギター、ファッションなど膨大な収集品をベースに、その世界を探求。1994年から毎年、スイス時計フェア取材を継続中。

  • 田中 克幸

    田中 克幸
    Katsuyuki Tanaka


    Gressive編集顧問。1960年愛知県名古屋市生まれ。大学卒業後、徳間書店に就職。文芸部を経て1988年「グッズプレス」創刊に携わり、後に編集長に就任。この間、1993年に同社で「世界の本格腕時計大全(後の『TIME SCENE』)を創刊し、2009年まで編集長を務める。同年より「Gressive」に参加。1994年よりスイスを中心としたヨーロッパ各国を取材、現在も継続中。

  • 篠田 哲生

    篠田 哲生
    Tetsuo Shinoda


    1975年、千葉県生まれ。40を超える媒体で時計記事を担当しており、10数年ものスイス取材歴を重ねてきたが、この業界では今でも“若手”というちょうどよい湯加減のポジションをキープ。快適な出張にこだわり続け、スイスに小型炊飯器を持ち込み、朝から飯を炊くという業界屈指の実践派。

  • 竹石 祐三

    竹石 祐三
    Yuzo Takeishi


    1973年、千葉県生まれ。1998年よりモノ情報誌編集部に在籍し、2011年から時計記事を担当。2017年に出版社を退社し、Gressiveの記事制作に携わる。

  • 堀内 僚太郎

    堀内 僚太郎
    Ryotaro Horiuchi


    フォトグラファー。1969年、東京都生まれ。1997年に独立。広告、ファッション、CDジャケットやポートレイト等で活動。2006年からスイス時計フェアの撮影を続け、2009年からGressiveに参加。2018年にH2Fotoを立ち上げ写真講師としても活動。

  • 江藤 義典

    江藤 義典
    Yoshinori Eto


    フォトグラファー。1981年、宮崎県生まれ。2001年に上京。2006年、知人の紹介でカメラマンの個人スタジオのアシスタントに。スタジオ勤務を通し写真撮影とデジタル・フォト加工技術を習得。2013年に独立し、自らのスタジオを開設。Gressiveをはじめ、メンズ誌、モノ情報誌、広告等で活動。スイス時計フェアは2015年から撮影を継続。

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