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2019 watch trendデータを元に振り替える2019年のウォッチトレンド 01

レポート1:
【貴金属ケースやステンレルスティールケースの輸出量は微減。逆にコンビケースや他金属ケースのモデルが伸長】

データを元に振り替える2019年のウォッチトレンド座談会。左からGressive編集部の竹石、田中、名畑、篠田

データを元に振り替える2019年のウォッチトレンド座談会。左からGressive編集部の竹石、田中、名畑、篠田

篠田:時計のケース素材といえば、高級時計ならゴールドやプラチナで、スポーツウォッチならステンレススティールというのが相場ですが、どうやらその状況は崩れつつあるようです。2019年は、「ブロンズ」素材が目立ちましたね。


名畑:使っていくうちにエイジングし、色が変化していくブロンズ素材は、ラグジュアリー素材とは言えません。しかし数年前にラルフ・ローレンがSSベースのエイジング加工のケースを作りましたよね。ラルフ・ローレンらしいラギットさを時計で表現しており、高級時計をファッション的な切り口で楽しむという考え方が始まりました。


田中:私がブロンズ素材で覚えているのはパネライ。10年前くらいかな? SIHHでブロンズケースの時計を見た時は、「こういう考え方があるのか」と驚きました。経年変化を楽しんでほしいというコンセプトはわかるのですが、まさかここまで広まるとは思いもしなかった。


名畑:ブロンズは銅と錫の合金で、加工しやすいという特性から潜水具など実用素材として用いられてきましたから、海というつながりでパネライがこの素材を選ぶのは、説得力がありますね。


竹石:新作時計で目立ったのは、ベル&ロス「BR03 ダイバー」でしょう。この時計は潜水具がモチーフになっていますし、デザインやコンセプト、カラーリングなど、ブランドの個性がちゃんと出ている。ブロンズ素材をトレンドとして使うのではなく、そこにストーリー性を絡めるのがいいですね。



名畑:しかもケースバックの素材にはチタンなどを使うことで金属アレルギーに対しても、きちんとケアをしている。この個性的な素材を上手に使おうという意思を感じますね。


篠田:実用素材であるチタンは、時計業界でもすっかり定番化しましたね。軽くて錆びないので、大型ケースのダイバーズウォッチに用いられることが多いのですが、今ではもうちょっとドレッシーなモデルにも使われるようになっている。


名畑:チタンウォッチの始まりはシチズン。1987年に誕生した「アテッサ」からです。しかしチタン素材は、そのままだとグレーメタル色。これはあまり高級感がない。そこでシチズンでは表面加工技術のデュラテクトを使って、ステンレルスティールのような色調にしています。しかし最近は、このグレーメタル色への評価が高まっているように思えますね。


田中:90年代のチタンは、特別感のある素材でした。でも軽くて耐アレルギー性も高い、実用的で機能的な素材ですから、広く使われるのは当然でしょう。しかしそれがファッション化されつつあるというのが面白い。


篠田:確かにそうですね。エルメス「アルソー」は優美なデザインで人気ですが、新作の「アルソー78」はベゼルにマット仕上げのチタンを使用しています。もちろんグレーメタル色ですが、そのおかげで力強くなり、新しい魅力が加わりましたね。



竹石:ウブロも積極的にチタンケースを使っていますよね。しかもポリッシュ仕上げによって高級感も引き出している。チタンケース=機能的という時代から、徐々にラグジュアリーな素材として進んでいくのかもしれません。


篠田:コンビケースも増えているようです。個人的には所有したいと思ったことはか無かったのですが、カルティエ「サントス デュモン」だけは別格。ラグジュアリーメゾンらしい優雅さがあります。



竹石:僕はカルティエ「サントス ドゥ カルティエ」のSSモデルを持っていますが、購入する際にはコンビと迷いましたよ。カルティエのコンビモデルは、ゴールドの使い方が上手いんですよね。


名畑:ゴールドによる表現力は重要だと思うよ。コンビケースに抵抗がある人って少なくないと思うんだけど、それっていわゆるバブル時代のギラギラとした印象があるんじゃないかな。


田中:そうなんですよ。折衷案の“潔くない時計”という印象もあるしね。


名畑:でも若い世代にはそういった先入観がないから受け入れやすくなっているのかも。


篠田:カルティエのようにディテールに凝っている場合は、ゴールドでさらにクラス感がアップする。デザインを楽しむ時計ほどコンビ素材がアクセントになるので、より効果的なんですよね。




取材・文:篠田哲生 / Report&Text:Tetsuo Shinoda
写真:江藤義典 / Photos:Yoshinori Eto


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