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Gressive Premiumパテックとジュルヌ、オーデマ ピゲ……“時計芸術”を極めた作品が上位を占めた2021年第9回「オンリーウォッチ」in ジュネーブ 01

難病の筋ジストロフィー症研究援助のために
特別製作されたユニークピースが集う
2005年創設の「オンリーウォッチ」

2021年11月6日、ジュネーブ・パレクスポ(旧SIHH開催場所)で催された「オンリーウォッチ」のオークション

2021年11月6日、ジュネーブ・パレクスポ(旧SIHH開催場所)で催された「オンリーウォッチ」のオークション。54の時計ブランドが出品した53のユニークピースを巡り、850人の観客が集った。その成果は2,976万スイスフラン(約36億9,024万円)の調達額が証明している。

 デュシェンヌ型筋ジストロフィー症(DMD)とは筋ジストロフィーの中でも発症頻度が高い疾患で、筋力の低下に伴う運動機能の障害や様々な合併症を引き起こし、日本でも指定難病のひとつになっている。主に男児、しかも幼児期から発症する点にこの難病の悲劇性が見られる。人類を悩ますデュシェンヌ型筋ジストロフィー症の研究に対する寄附を目的として、モナコの骨格筋ミオパシー協会会長のリュック・ペタヴィノ氏等が発起人となって2005年に始まったのが「オンリーウォッチ(ONLY WATCH)」である。元々は前年の2004年にペタヴィノ氏とモナコ公国アルベール2世大公や、アンティコルムのオズワルド・パトリッツィ氏(当時)の間で持ち上がった話が発端。現在でもアルベール2世大公は強力な推進メンバーである一方、オークションはクリスティーズが担当する。日々、世界で頻繁に開催されている時計オークションの中でも、この難病に光を与えることを目的とする点に於いて「オンリーウォッチ」の意義は極めて深い。

 2005年の初回ではパテック フィリップ、ブレゲ、リシャール・ミル等34のユニークピースが出品され、フィリップ・スタルクのデザインによるリシャール・ミルの「オートマティック キャリバーRM005-1」が最高落札価格28万5,000ユーロを記録した(日本では同年9月22日に東京・目黒雅叙園でプレビューが開催)。

 2年に1度の開催スケジュールを元に第9回目を迎えた2021年の当オークションは、9月22日のモナコを皮切りにドバイ、東京、シンガポール、香港、マカオでプレビューが開催され11月6日のジュネーブで幕を閉じた。25の参加国よりコレクター、慈善事業家、時計会社代表者、科学者、メディアが参加。今回のテーマ“オレンジ”を元に創意工夫を凝らした54のブランドから出品された53のユニークピースは、落札価格の合計が2,976万スイスフラン(約36億9,024万円。1スイスフラン=約124円で計算。以下同)、その内5つの出品作が各々100万スイスフラン(約1億2,400万円)を超える落札価格を記録したことは想定外の驚きである(それらはオーデマ ピゲ、ドゥ ベトゥーン×ヴティライネン、F.P.ジュルヌ、パテック フィリップ、リシャール・ミル。54ブランドで53ピースというのはドゥ ベトゥーンとヴティライネンの2ブランドでひとつのピースを製作したから)。これらはデュシェンヌ型筋ジストロフィー症の研究のために寄付される。ちなみに今回を含めた全9回のオークションの総計額は1億スイスフラン(約124億円)に上った。

 モナコの骨格筋ミオパシー協会会長のリュック・ペタヴィノ氏は、この結果に対してこのように述べる。

「作品と努力が認められた時計会社ならびに職人のために、歴史の一部となった時計を所有する参加者のために、またデュシェンヌ型筋ジストロフィーの数十万人の患者とその家族、そして解決策を見つけることにこれまで以上に近づいている研究者たちのために、(この結果は)夢が叶う以上のもので強い前向きなシグナルです」

 34のブランドで始まった2005年の初回から数えて第9回を迎えた今回は、参加ブランドが54にまで増加。「オンリーウォッチ」の目的や意義から考えると参加ブランドの増加は歓迎すべき傾向。時計製造、愛好家、研究者、この難病で苦しむ世界の人々にとって絶対に継続すべきオークションであるし、特に時計メディアは世界に広く伝える義務がある。





取材協力:クリスティーズ ジャパン / Special thanks to:Christie's Japan