RAYMOND WEIL「レイモンド・ウェイル」CEOに聞く話題の新作『ミレジム』開発の背景 01
1976年に始まる「レイモンド・ウェイル」の
芸術的時計作りの系譜
スイスの時計職人レイモンド・ウェイルが1976年に創業した『RAYMOND WEIL(レイモンド・ウェイル)』は、スイス時計産業の中心地のひとつであるジュネーブに本拠を置く独立系時計ブランドである。
当時、スイスではクオーツ腕時計が台頭し、伝統的な機械式時計産業が危機に瀕していた。その状況を打破し、伝統と歴史を守るため「レイモンド・ウェイル」は新たな時計ブランドとして誕生したのであった。
やがて、その真摯な時計作りの理念が理解されて全世界にファンを獲得。現在では世界90か国、3,000以上の店舗で販売が展開されている。
その「レイモンド・ウェイル」の現CEOエリー・ベルンハイム氏が来日。そこで、2023年11月に「ジュネーブ ウォッチメイキング グランプリ(GPHG)2023」において「チャレンジウォッチ部門」を受賞した話題の新コレクション『ミレジム』を中心に、「レイモンド・ウェイル」の時計作りについて話しを伺った。
そこでまず最初に、今回の来日の目的について聞いてみよう。
「ひとつは我々の日本総代理店であるジーエムインターナショナルのスタッフに直接、会うためです。そして、もちろんあなた達のようなジャーナリストに会うためということもあります。新型コロナ以前は毎年、日本に来ることができましたが、あのパンデミックがあったために、なかなかやってくることができませんでした。そこで今回は久しぶりに日本のスタッフとミーティングをして情報を共有すると同時に『ミレジム』という新作コレクションをプレゼンテーションし、その上で我々『レイモンド・ウェイル』の日本における認知度を高めていくための方法を協議しようと考えたのです」
「レイモンド・ウェイル」の背景にある
音楽への情熱を受け継ぐDNA
たしかに新作『ミレジム』は我々ジャーナリストだけでなく、時計好きの間で話題沸騰のモデルであり、今回のインタビューも、まさにこれが本題である。だがその前に、以前から伺いたかった、「レイモンド・ウェイル」が一貫して音楽をテーマに時計作りを進めている理由について質問した。
「その原点は創業者であり、私の祖父であるレイモンド・ウェイルにあります。彼は優秀な時計師であると同時に音楽の愛好家でもあったのです。ですから当社は、その創業時代から、すでに時計と音楽のコネクションを築いていました。したがって私にも、そしてブランドにも音楽のDNAが受け継がれているのです」
聞けばエリー・ベルンハイム氏はチェリストであるという。
「ええ、私もチェロを弾くので、家業である時計作りと音楽への情熱をリンクさせていきたいと考えており、時計と音楽や芸術とのリンクを、とても大切にしています。チェロは小さい頃から弾いていて、その課程を習得したというディプロマ(証明書)も持っていますが、時々、ピアノも弾いています。そして私の息子もピアノを弾きますから、家庭ではチェロとピアノでセッションをし、楽しい時を過ごしています」
以前から「レイモンド・ウェイル」の広告には音楽やダンスなどのアーティストが多く登場し、製品でも音楽をテーマとしたモデルが多い理由が、やっと理解できた。それにしてもベルンハイム氏はチェロやピアノなどクラシック音楽の素養をお持ちだが、製品にはロックをテーマとするモデルが少なくない。それは、なのはなぜなのだろうか?
「確かに、祖父や父の時代はクラシックやオペラとコラボすることが多かったのですが、私自身は音楽全般が好きですから、その興味がクラシックだけでなく他のジャンルにも及んでいるのです。音楽には決してクラシックだけでなく、いろいろなジャンルがあります。つまり多様性があるのです。それを考えると、クラシックをはじめとしてジャズやロックまでをテーマに時計作りを進めることは、顧客のターゲットの層を広げることにもつながると思います」
この自由な精神こそが、現在の「レイモンド・ウェイル」の基盤となっていることは間違いない。中でも私が興味をそそられたのは、エレクトリック・ギターの名門である米国ギブソン社のレス・ポールとコラボレーションしたモデルである。
「私は音楽も好きですし、楽器自体にも興味があります。ですからギブソンとのコラボレーションは、まさにファンタスティックなものでした。
ギブソンといえばギター界のビッグネームですし、彼らが生み出した数々の名機の中でももっとも有名な『レス・ポール・モデル』からインスピレーションを得て、『フリーランサー』のアイコニックなクロノグラフが誕生したのです。
このモデルを開発する際、私はナッシュビルのギブソン工場にも行きましたが、時計作りと楽器作りには似ている要素があり、非常に良いインスピレーションを得ることができました」
この『フリーランサーレス・ポール・モデル』は世界限定500本が販売されたが、数日で完売してしまったとのこと。
「これは本当に良い経験でした。実際、私もギブソンのシンプルなSGモデルとレス・ポール・モデルの2本を持っていますが、このようなモデルが、今後も作れたら良いなと思っています」
話題の『ミレジム』の開発コンセプト
そして今後の展開とは?
では、いよいよ話題の新作『ミレジム』について伺っていこう。
そもそも、このクラシカルにしてシンプルで上質な『ミレジム』は、どのようなコンセプトのもとで開発されたのだろうか?
「この『ミレジム』の開発スタートは3年ほど前のこと。最初に私自身、このようなモデルが作りたいという明確なイメージがありました。そのひとつが1930年代に人気を博したセクターダイアルのデザインを絶対に使いたいというものです。
そして、そのレトロな中にも、モダンな要素を取り入れたモデルを作るというのが、そもそもの開発コンセプトでした。そして、とにかくシンプルにしたい。決して複雑なものではなく、スモールセコンドとセンターセコンドの二種類を作りたいという思いがありました。
このようなモデルを開発するには、新型コロナの時代は逆にタイミングが良かったといえます。そして新しいことを始めることが刺激にもなり、我々のモチベーションを高められたのではないかと考えています」
その結果として誕生した『ミレジム』は全世界で大きな反響を呼んだ。
「ええ、反響は非常にポジティブです。世界中の時計愛好家から寄せられるコメントは、どれも非常に良いものばかりです。それは我々の販売パートナーはもちろん、実際に時計を購入いただいたエンドユーザーからも、高い評価を得ています。これは大変、光栄なことですね」
このレイモンド・ウェイルの新コレクション『ミレジム』は、2023年11月に開催された「ジュネーブ ウォッチメイキング グランプリ(GPHG)2023」でCHF2,000(約340,000円)以下のモデルを対象とする「チャレンジウォッチ部門」を受賞したことは、すでに紹介したとおり。
その特徴と美点は数々あるが、エリー・ベルンハイム氏が開発当初から思い描いていたセクターダイアルの採用が大きなポイントとなっていることは間違いない。
そして39.5mmという小振りなケースとヴィンテージの風合いを色濃く持つ上質なカーフ・ストラップのマッチングもまさに絶妙。クラシカルでありながら、どこか新しさも感じるこのモデルは、「レイモンド・ウェイル」が提唱する“ネオ・ヴィンテージウォッチ”という表現にまさにピタリの銘品である。
さて、このような銘品を生み出したばかりで恐縮だが、今後、「レイモンド・ウェイル」は、どのような新作を準備しているのだろうか?
「それは我々にとってのナンバーワン・コレクションである『フリーランサー』の新作があります。これは4月にジュネーブで開催されるW&Wで紹介する予定です。『フリーランサー』というコレクションは2007年から発売されており、そこにはダイバーズモデルやGMTモデル、クロノグラフなどがあります。この基幹コレクションにこの春、我々は新しい仕様のモデルを予定していますので、ご期待ください」
それは確かに楽しみだ。そして今後、『フリーランサー』や『ミレジム』などを主軸として、日本におけるイベントや新たなアプローチのプランはあるのだろうか?
「確かに日本市場は我々にとって重要なマーケットです。現在は『ミレジム』を前面に打ち出していますが、これを皮切りに限定版や日本に合った時計作りを進めていきたいと思っています。それによって、我々『レイモンド・ウェイル』のブランド知名度を、より一層、高めていけるのではないかと期待しています」
>>時計愛好家が注目するネオ・ヴィンテージな『ミレジム』とは?
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