PARMIGIANI FLEURIER“別れる”のではなく“再会する”。これが今回の“ラトラパンテ”に込めた想いです。 02
非常に豊富な技術力を持っていながら、同時にシンプルな時計。
いわゆる“リッチ・ミニマリズム”が我々のスタイルです。
「“再会”というのは貴重なことです。ですからホームタイム針をローズゴールドにしたのです。一方、“別れる”針(GMT針)はロジウム鍍金(めっき)ゴールド(シルバーカラー)ですね。またGMT針を作動させる8時のプッシュボタンも針と同じシルバー色です。しかしホームタイム針はローズゴールドで、その上GMT針を元の位置に戻すリューズ上のプッシュボタンもホームタイム針と同じローズゴールド。つまり我が家(ホーム)がローズゴールドで、このホームへ戻るための作動ボタンもローズゴールドです。
例えば今、GMT(ローカルタイム)針は日本時間を指しています。一方私の妻がいるスイス時間(ホームタイム)はローズゴールド針で表示しています。私は日本への出張を終えると、リューズ上のゴールドのプッシュボタン(“バックホーム”プッシャー)を押すことで、出張中の私のシルバー針=GMT針は妻のいるスイス=ゴールド針へ戻ります。これで2本の針はひとつになるわけです。私は故郷のスイス・ジュネーブへ、妻の元へ帰りふたりはひとつになるわけです。これが“バックホーム”ファンクションです。機能に生命を与える意味でローズゴールドにしました。GMT機能にロマンティックなストーリーを与えたのです。」
世の中にはワールドタイマーを始め、多様な表示方法を搭載する複数時刻表示時計があるが、テレーニ氏の感性はその複雑な表示を“美しくない”と判断した。複雑なメカニズムを表現するとき、見た目はシンプルであることにこだわったのである。
「GMTですが、みなさんはいつも出張している訳ではありません。私の場合、出張は30%で、70%はホーム=スイスにいるわけです。そこでホームにいるときに色々な情報が時計についているのは煩わしい、過剰な情報は要らないと考え、このようなシンプルなダイアルにしました。一般的にGMTは24時間表示やデイ&ナイト表示など色々な多機能表示を設けるのですが、ダイアルの美観を考えると今回のシンプルモデルの方が顧客は満足してくれると思います。普段はシンプルウォッチとして楽しむことができるように考えました。
それが我々の哲学です。純然たる美しさ(エステティック)と技術(テクニック)が合わさったものが我々の時計だと思います」
彼の言葉を聞いて思い出したのが、現在はウブロ社内に所属する、かつての複雑ムーブメント開発会社のBNBだ。2006年訪問の際、その時の首脳陣のひとりである時計師のエンリコ・バルバシーニ氏は複雑時計に関して「複雑になればなるほど構造はシンプルでなければならない」と述べた。彼の場合はメカニズムの構造に関しての言及だが、テレーニ氏はメカニズムをいかにシンプルに見せるかというエステティック・デザインについて述べる。中身と外見の違いはあるものの、私は両者に複雑時計に共通するテーマが流れている様に思える。そこがパルミジャーニ・フルリエというブランドの明確な立ち位置なのだろう。
「ブランドを立てていて明確にすべきことは、時計愛好家に向けてきちんとしたものを発表していくことが大切です。彼らに対して妥協は絶対にできません。その点我々はプレステージがあると思いますし、最高の品質、仕上がり、クリエイティビティにおいても最高のものが出来るという状態にあると信じています。すでに才能は集まっています。今後はブランドのスタイルをきちんと明確にしていくことが大切だと思います」
“ブランド・スタイルの明確化”とは具体的に何を指すのだろうか?
「スタイルの明確化にあたっては、ふたつの重要な価値があります。ひとつはミシェル・パルミジャーニ氏による文化的な知識だと言えると思います。彼は伝説的な時計修復師ですが、彼の持っている知識が最初の価値になります。ふたつめは彼の修復師としての価値、つまりミシェルは修復師としての長い実績がありますが、ただし修復の世界では修復師は目立ってはいけません(時計の修復とはオリジナルをそのままの状態で復元することが至上命題なので、そこに修復師=ミシェル氏の個性や技術が目立ってはいけないという意味。修復師は影の存在である)。このような経験から醸し出された控えめさ、才能はあるのだけれどもそれを見せないようにしているのが、彼の価値だと思います。我々のお客さまも時計の知識は豊富にあるのだけれども、控えめな方が多いですね。
我々のスタイルを“リッチ・ミニマリズム”と自ら言っていますが、技術的には非常にリッチなものを持っている一方で、美観的には非常にシンプルで純粋なものを提供していく。それが我々のスタイルだと思います」
数年程前から(予兆は2000年代から感じられたが)、時計の潮流のひとつにシンプルウォッチがある。2000年代に一時加熱化した“デカ厚”時計の反動だが、そのような時でもパルミジャーニ・フルリエは我が道を行くスタイルを通し続けた。非常に高い技能を持ちながらも、あえてそれを見せびらかさない控えめさ。テレーニ氏の言うパルミジャーニの“リッチ・ミニマリズム”は、日本人の感性、いわゆる“引き算の美学”に通じるものがあり、ここに日本の時計愛好家が惹かれる要因のひとつと思う。
協力:パルミジャーニ・フルリエ・ジャパン / Thanks to:Parmigiani Fleurier Japan
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