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PARMIGIANI FLEURIER“別れる”のではなく“再会する”。これが今回の“ラトラパンテ”に込めた想いです。 01

普段、母国にいる時に複雑表示のGMTは必要ですか?
美的な意味でシンプルなGMTを目指しました。

2021年登場の「トンダ PF コレクション」の新モデルとして2022年に発表された「トンダ PF GMT ラトラパンテ」

2021年登場の「トンダ PF コレクション」の新モデルとして本年(2022年)発表された「トンダ PF GMT ラトラパンテ」。仏語の“ラトラパンテ(Rattrapante)”には “再び合う”という意味があり、英語の“スプリットセコンド(Split second)”=“分離”という従来の意味とは真逆のコンセプトが込められている。非常にシンプルなエステティックは、多機能時計にありがちなデザインの複雑化に対するアンチテーゼ。時刻の読み取りやすさという、時計本来の機能を再認識させられるモデルである。


 当たり前のことだが、時計に限らず製品名(モデル名)とは、愛好家のみならず世間全体への浸透度を左右する大変重要な要素=アイデンティティである。時計以外の業界ではイメージ先行型の製品名も多いが、時計界に関しては必ずと言って良いほど、その時計の機能を名称に付加するというフォーマットが定着している。例えば「XXXXXXX・クロノグラフ」や「XXXXXXX・トゥールビヨン」など。おかげで一般の時計愛好家も我々メディアにとっても分かりやすい。しかし本年(2022年)のパルミジャーニ・フルリエ(PARMIGIANI FLEURIER)の新作「トンダ PF GMT ラトラパンテ(Tonda PF GMT Rattrapante)」はまったく異なる理由でこの名称が命名された(おかげで当初、私の頭は混乱した)。その混乱は本年(2022年)3月から4月にかけて開催された「ウォッチ&ワンダーズ・ジュネーブ2022(Watches and Wonders Geneva 2022)」でのオンライン発表会でのことだった。

 まだ新型コロナ禍の影響により他のブランド同様、スイス・ジュネーブでのリアル発表会と並行してオンラインでの新作発表会を開催したパルミジャーニ・フルリエ。その冒頭、新作を手に取りながら英語で解説をするグイド・テレーニCEO等からは、さかんに“ラトラパンテ、ラトラパンテ”という言葉が聞き取れる。確かに新作名は「トンダ PF GMT ラトラパンテ」であるし、パソコンの画面に映し出される時計はどう見ても追加針を搭載したGMTである。しかも彼らの操作により2本の針は重なり1本針のように見える。自分の聞き取り能力の無さを呪いながら、GMT時計を「ラトラパンテ」と呼称する意味が理解できなかった。そこで後日、来日したグイド氏への最初の質問はこの件である。

  • トンダ PF GMT ラトラパンテ
  • トンダ PF GMT ラトラパンテ
    Tonda PF GMT Rattrapante

    多機能表示系になりがちな複数時刻表示時計を、まるで2針時計のようなシンプルなデザインでまとめた“リッチ・ミニマリズム”GMT。逆転の発想と言えるデザインにも増して、ラトラパンテを“分離する”という英語的な解釈ではなく、仏語の“再会する”という別の意味から誕生した製品名に、当モデルに込められたパルミジャーニ・フルリエの想いとセンスの高さが感じられる。


    Ref.:PFC905-1020001-100182
    ケース径:40.0mm
    ケース厚:10.7mm
    ケース素材:ステンレススティール(ポリッシュ/サテン仕上げ)
    防水性:60m
    ストラップ:ステンレススティール(ポリッシュ/サテン仕上げ)
    ムーブメント:自動巻き、自社製ムーブメントCal.PF051、31石、毎時21,600振動、パワーリザーブ約48時間、時・分、GMT
    価格:3,509,000円(税込)


「GMTは必要な機能ですが、もっとエレガントに繊細な形で発表できないかと思いました。24時間やデイ&ナイト表示など色々な表現方法はあるかもしれませんが、GMTの機能はふたつのタイムゾーンの表示ということに尽きます。その最小限の形でシンプルに美しく表現しようとすると、機能面も含めてふたつの針で十分ではないかと思いました。私もよく出張しますが、航空機が目的地に到着する度にリューズを回して現地時刻に調整するのが非常に面倒だと思っていましたが、この時計の場合はプッシュボタンひとつでホームタイムに戻れることが便利です」


 2021年1月にパルミジャーニ・フルリエのCEOに就任したグイド・テレーニ氏。ミラノ生まれの生粋のイタリア人で、スイスとイタリアの国籍を持つ彼は、静かなミドルトーンの声で理路整然と話を進める理知的で物静かな学者風の印象。2001年の初来日以来15回ほども来日経験があり、その醸し出す雰囲気に同国人である故・ルイジ・マカルーソ氏や、彼のご子息であるステファノ・マカルーソ氏を思い出した。

  • パルミジャーニ・フルリエCEO グイド・テレーニ
  • パルミジャーニ・フルリエCEO
    グイド・テレーニ
    PARMIGIANI FLEURIER CEO
    Guido Terreni


    イタリア、ミラノ生まれ。ルイジ・ボッコーニ大学で経済学を学ぶ。1995年にダノングループでキャリアをスタート、2000年にスイスへ移住しブルガリ グループのウォッチメイキングディビジョンに参入。2010年にブルガリ・オルロジュリ社のプレジデントに就任し、その後10年間歴任する。ちょうどこの時期はブルガリがマニュファクチュール戦略、なかでも薄型ムーブメントの開発に注力していた頃であり、彼は現在のブルガリのステイタスの確立に貢献した功労者である。その実績は世界中で57個の時計に関するアワードと、超薄型ムーブメントに関する6つの世界記録に表れている。スイスとイタリアの両国籍を保有。


「“ラトラパンテ(Rattrapante)”というフランス語は“追いつく、再会する”という意味があります。これを英語では“スプリットセコンド(Split second)”と訳しますが、意味は“針が別れる”。確かに2本の針は分離しますが、どちらかというと“ラトラパンテ”には“別れる”というよりは“再会する”という意味が強いのです。

 8時のプッシュボタン(ラグに設置)で2本の時針のうちロジウム鍍金(めっき)がほどこされたゴールド(シルバーカラー)のGMT針が1時間ずつ前進します。これが現地時刻、ローカルタイムです。そしてリューズ上のボタンを押すことでGMT針は元の位置(ゴールド針の上)に戻り、あたかも1本の針のように見えます。そして再びGMT針が前進すると、これに隠れていたローズゴールド針が出現します。これがホームタイムまたは基準時間になります」


「トンダ PF GMT ラトラパンテ」のGMT針(シルバーカラーのローカルタイム表示針)と、時針(ローズゴールドのホームタイム表示針)機能を説明するグイド氏。私は長年“ラトラパンテ”というのは1本の針がもう1本の針に“追いつく”という意味で理解していたので、“再会する”という彼の解釈はとても新鮮、かつロマンティックでポエティックだ。




協力:パルミジャーニ・フルリエ・ジャパン / Thanks to:Parmigiani Fleurier Japan


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