LONGINES馬術や競馬を通して不変の価値を訴求する ロンジンの戦略
「3つの価値観をロンジンと共有すること。
それが競馬や馬術をサポートする理由です」
まずバウムガートナー氏にうかがいたいのは『第39回ジャパンカップ ロンジン賞』を含め、ロンジンは、なぜこれほどまでに馬術や競馬のサポートに力を入れるのかということである。
「それには、ふたつの大きな理由があります。ひとつはロンジンが馬術を1869年からサポートしているという歴史的経緯です。当時はポケットウォッチの時代でしたが、ケースに馬術のシーンをエングレーブしたモデルを販売しており、そこからロンジンと馬術の関係が始まりました。
第二の理由は19世紀の終わり頃、ロンジンではヨーロッパやアメリカにて自社開発したストップウォッチやクロノグラフで馬の競技の計時を担当しました。そこから始まってロンジンの馬術や競馬などへのサポートがさまざまに広がっていったのです。
そして、なぜ競馬や馬術かといえば、馬の競技は3つの核となるバリュー(価値)をロンジンと共有しているからです。それはまずエレガンス(優雅さ)、次にトラディション(伝統)、そしてパフォーマンス(行動・効果)です。
ここでのパフォーマンスの意味は、単に馬の素晴らしい演技や競走馬の早さだけでなく、例えば競馬場に出向く時、人々は個性を生かしたファッションに身を包むことがヨーロッパの伝統になっています。このような競馬場や馬場での体験がロンジンの歴史とリンクし、共有する価値となる。それがパフォーマンスの意味なのです。
これを証明するモデルが競技する馬をエングレーブしたゴールドケースのポケットウォッチです。このようなモデルをロンジンでは記念モデルとして復刻していますが、これはロンジンと馬術・競馬との歴史にインスパイアされたものです。
さらに単に歴史的なことだけでなく、馬術は男女が同じ場で競い合う素晴らしいスポーツです。一般の方もチャンスがあれば競技に参加できますし、ロンジンでも男女分けへだて無く豊富なコレクションを用意していますから、皆さんに受け入れらやすいと思うのです」
よりオリジナルに忠実となり
磨きがかかるヘリテージコレクション
1832年に創業し、1880年にはスイスで最初に『ロンジン』というブランドを商標登録した長い歴史を誇るロンジン。それだけに過去のヘリテージとなる名作・傑作は極めて豊富だ。この豊かな資産を生かし、近年はその復刻版である『ヘリテージコレクション』が充実。クオリティも格段にアップしている。しかしなぜロンジンはここまでヘリテージコレクションに力を入れるのだろうか?
「ロンジンは1987年にリンドバーグのスケッチを元にしたアワーアングルウォッチの復刻版を発売するなど、早い時期からヘリテージモデルを手がけてきましたが、それが今、世界的なトレンドとなり、さまざまなジャンルで豊富なヘリテージモデルを発表しています。そのひとつである『レジェンドダイバー』のコレクションは、最初はたった1個のモデルでスタートし、現在では婦人用モデルも展開する、しっかりとしたコレクションに育っています。
これらは単なるレプリカではなく、ヴィンテージのディテールを尊重しつつ現代の高性能なキャリバーを搭載することでアップデイトしているのが特徴です」
このロンジンのヘリテージコレクションだが、実は以前、日付表示が追加されることが多く、これがピュアなヴィンテージ愛好家に批判されることもあった。だが最近では日付がなくヴィンテージさが増している。これにはどんな理由があるのか?
「確かに原型にはなかった日付を入れたモデルもありましたが、やはり愛好家はオリジナルに忠実なものを求めるので、現在は日付無しが主流になっています。
実用的には“やはり日付がないと”と思うこともありますが、オリジナルのデザインは、やはり素晴らしいバランスですから、それに忠実であることが大切だと今は考えています」
自社の豊富な傑作や名作にインスピレーションを得て繰り出すロンジンの『ヘリテージコレクション』。それはこれからも世界の時計愛好家の心を奪うアイテムとして注目されつづけるに違いない。
取材・文・写真:名畑政治 / Report&Text:Masaharu Nabata
写真:堀内僚太郎 / Photos:Ryotaro Horiuchi
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