Watch Person Interview vol.56 「ランゲのCEO就任を決断したとき、 私は妻に”生涯の仕事を見付けたよ”と伝えたのです」
1989年のベルリンの壁の崩壊を契機とし、1990年には東西ドイツの統一が実現。これによって息吹を吹き返したドイツの高級時計ブランドが、A. ランゲ&ゾーネである。
2011年1月1日、このA. ランゲ&ゾーネの最高経営責任者に就任したのがヴィルヘルム・シュミット(Wilhelm Schmid)氏。
「私がA. ランゲ&ゾーネのCEOに就任して2015年12月で5年になります。これは、実に多くの出来事で満たされた5年間でした。
自分自身で驚くのは、1年がこんなにも早く過ぎ去ってしまうことですね。これには失望すら感じました。
なんといっても1月のSIHH(ジュネーブ高級時計サロン)が終わると、すぐに次のジュネーブのことを考えないとなりませんし、次の、そしてまた次の、と話が始まるので、1年がすぐに経過してしまうのです。
しかし、ふり返ってみると、いかにに多くの新作を発表してきたことに驚きます。『グランド・コンプリケーション』、新しい『ランゲ1』、『リヒャルト・ランゲ・パーペチュアルカレンダー”テラ・ルーナ”』、『ツァイトヴェルク・ミニッツリピーター』など、A. ランゲ&ゾーネのような小さな会社としては、驚くべき数の新作と言えるでしょう。
その間、新しい工房も完成し、ブティックも世界中でオープンし、サービスも向上しました。ですからこの5年間は、決して退屈ではありませんでしたね」
このシュミットさん、A. ランゲ&ゾーネのCEOに就任する前は、主に自動車業界で働いていたという。そこから時計界への転身において、とまどったことはなかったのだろうか?
「時計界と自動車業界との違いは、自動車業界が極度に工業化された世界であり、逆に時計界は、ほとんどの工程を手作業で行っているということです。
そして、自動車では常に技術的な変化が進められていますが、時計は伝統的な技法を守っていますね。
一方、類似点でもあります。たとえば顧客の立場に立ってみると、生産現場とは違い、製品を手にして感動する姿や情熱は、自動車と時計で実に似通っているのです」
ところで、自動車業界から時計界への転身は、ご自身で判断したことなのだろうか?
「このポストが用意されていなければ、私はここにいなかったでしょう。しかし、私が決断しなければ、こうなっていなかったはずです。
なんでこの職を引き受けたかの直接的なきっかけを話すことは難しいのですが、自動車会社を退職してA. ランゲ&ゾーネに移ると決断したとき、私は家内に『私は生涯勤める会社を見つけた』と言ったのです。
やがて、そのオファーが具体化し、A. ランゲ&ゾーネのCEOに就任すると決まったとき、私は非常にうれしく思いましたし、その決断は間違っていなかったと実感しましたね」
36.1mmのケース直径を特徴とする『リトル・ランゲ1』は、小振りなケースに、A. ランゲ&ゾーネのフラッグシップ・モデルである『ランゲ1』が持つ要素、つまり中心軸をはずし、重ならないように配置されたそれぞれの針や、ランゲ独自のアウトサイズデイト(大型日付表示)などの要素をすべて収めた婦人用のモデル。文字盤は淡いブルーの光を放つマザー・オブ・パール(真珠母貝)。ケース素材は18Kピンクゴールドおよびホワイトゴールドがある。
「やはりA. ランゲ&ゾーネはドイツ最大の成功企業です。実際のブランドより、そのサクセス・ストーリーが有名なほど。再統一の後から、グラスヒュッテの人口が順調に増えていることでも、それがわかりますし、地域の経済にも大きな貢献を果たしています」と胸を張る。
取材・文:名畑政治 / Report&Text:Masaharu Nabata
写真:堀内僚太郎 / Photo:Ryotaro Horiuchi
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