Watch Person Interview vol.53 「もちろん機械式時計でも 多くの新作開発を予定しています」
しかし、新しいコネクテッド・ウォッチの開発には多大な投資が必要だったはず。これは回収可能なのだろうか?
「もちろん、我々の投資した額が、そのまま返ってくるとは考えてはいませんが、やはりタグ・ホイヤーは、このジャンルのモデルをいち早く発売することで注目されるでしょう。これはブランドにとって利益です。
また、このジャンルの登場が、単純に機械式時計にとって利益だとも考えていません。ただし現在のところ、スイス時計界にどれほどのインパクトが与えられるのかは推測できないのです。とはいえ、そのインパクトは確実にあり、これを無視することはできないのです。おそらく最初に大きな影響を受けるのはクオーツでしょう。機械式時計については、まだお答えできません」
セモン氏をしても未知数だというコネクテッド・ウォッチのインパクトだが、確実にこのジャンルが成長するであろうサンプルがある、とセモン氏は言う。
「たとえば1970年代、車を買う時、ラジオはオプションでした。しかし今ではラジオはもちろん、コンピュータすら搭載されています。逆にラジオもコンピュータも入っていない車は、買いたくはないですよね?
また1980年代、携帯電話を持っている人はほとんどいませんでしたが、今では携帯電話がなくては生きていけないほどの状況になっています。
ですから私は将来的にはコネクテッド・ウォッチが携帯電話に代わってくるのではないかと予測しています。同時にふたつ持つことは無駄ですから、どちらかにまとめる必要があるでしょう。
もうひとつの例は5年ほど前からですが、それまでは誰もがノートパソコンを買おうと思っていたところ、タブレット端末が出てきて以来、これを買う人が圧倒的に増えました。2015年タブレットの売り上げが、初めてノートパソコンを上回りました。これと同じことがコネクテッド・ウォッチでも起きるのではないでしょうか?」
では一体、タグ・ホイヤーはコネクテッド・ウォッチによって生活をどのように変革していこうというのだろうか?
「我々がコネクテッド・ウォッチで目指しているのは、生活が変わるというより、人間と機械がどう向き合ってコミュニケーションしていくかということです。
ひとつの例として話しますが、10年後には医者が腕についているというイメージでしょうか? たとえば保険に加入するにはコネクテッド・ウォッチが必要になり、問診票に“あなたのコネクテッド・ウォッチは何社製ですか?”といった項目も入ってくるのではないか、と考えています。
そして、タバコに火を付けたり、お酒を飲もうとすると、コネクテッド・ウォッチが“貴方の健康のために吸わないで(飲まないで)ください”と警告する、といった現時点では計り知れない機能が登場するかもしれません」
コネクテッド・ウォッチで先鞭を付けたタグ・ホイヤー。となると気になるのは機械式時計のジャンルだが…。
「もちろん、機械式時計の分野でも多くの新作開発を予定しています。今は画期的なフライングトゥールビヨンの開発を進めています。これはクロノグラフを搭載したトゥールビヨンで、COSC(スイス公式クロノメーター検定所)のテストに合格したモデルです。おそらくこれはタグ・ホイヤーだけにしか作れないでしょう。
このモデルは、おそらく2016年春のバーゼルワールドでお見せできるでしょう。私としても、とても自信のあるモデルですから期待していてください」
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三針のデジタル・ダイアルを表示した状態。ストラップはブルー、ホワイト、オレンジなど全7色を展開。タグ・ホイヤーのオリジナル・ダイヤルやアプリケーションも随時、追加される予定。
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Androidアプリの情報はダイヤルの12時、6時、9時位置にある3つのカウンター内に表示(写真はゴルフアプリ)。2年間の保証期間終了後は1500USドルの追加で、タグ・ホイヤー製自動巻き時計に交換できる。
取材・文:名畑政治 / Report&Text:Masaharu Nabata
写真:堀内僚太郎 / Photo:Ryotaro Horiuchi
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