Gressive Impression わずか1000分の1秒が勝敗を分ける空のバトル。その公式タイムキーパーを務めるのは、ハミルトン
わずか1000分の1秒が勝敗を分ける空のバトル
その公式タイムキーパーを務めるのは、ハミルトン
それは、まさかの結末だった。
決勝ラウンドを勝ち抜いてきた4名が最終順位を競う“ファイナル4”。2017年シーズン好調のマルティン・ソンカ選手が最後のフライトを行うも、レース途中で2秒のペナルティ。これにより、室屋義秀選手は母国・日本での2連覇を成し遂げたのだ。
「レッドブル・エアレース・ワールドチャンピオンシップ」は、世界トップクラスに位置する14人のレースパイロットたちが小型のレース専用機を操縦し、最高時速370kmの中でタイムを競う国際航空連盟(FAI)公認のレースである。
空気で膨らませた高さ25mのエアゲート(パイロン)をすり抜けながら約4kmのレーストラックを回るものだが、エアゲートと接触してはいけないことはもちろん、水平ゲート(2本のパイロン)の間(約13m)を抜ける際の機体の高度や角度、さらには10Gを超える負荷を0.6秒以上かけてはいけないなど、安全を確保するためにも厳格なルールが設定されている。そんな状況下で最速タイムを競うのだから、パイロットには高い飛行技術はもちろん、精神力も求められる。過酷であり、見る者にとっては実にエキサイティングなレースだ。
現在、いくつかの時計ブランドがチームをサポートをしているので、この競技の存在については、知っている時計ファンも多いことだろう。そして2017年より、このレッドブル・エアレースの公式タイムキーパーを、ハミルトン(HAMILTON)が務めることになった。
ハミルトンは、2005年よりブランドのアンバサダーを務めるエアレース・パイロット、ニコラス・イワノフ選手のチームをサポートしているのみならず、すでに1919年から航空界との関係を築き上げている。ハミルトンの時計の精度は、当時のパイロットたちから絶大な信頼を獲得しており、それは後に、アメリカの定期航空郵便サービスでの採用につながっていく。
1930年代には、TWAやイースタン、ユナイテッド、ノースウエストといった主要航空会社の公式時計となり、結果、アメリカ初の大陸横断便就航の計時用時計に選ばれることになるのだ。現在も、アメリカの第40哨戒飛行隊をはじめ、韓国の第121戦闘飛行隊、スペインのパルトーラ・アスパ、オランダのアパッチやF-16 デモチームなどがハミルトンの時計を採用している事実を知れば、同ブランドがエアレースの公式タイムキーパーを務めることは、必然でもある。
取材・文:竹石祐三 / Report&Text:Yuzo Takeishi