H. Moser Special Event in Historical Place 本社CEOによって披露された H.モーザーの未来展望
去る2015年7月11日、国の登録有形文化財に指定されている名古屋市東区徳川にある『名古屋陶磁器会館』において、時計・宝飾 ヒラノ主催によるH.モーザーのユーザー・イベントが開催された。
スイスのH.モーザー本社からCEOであるエドゥアルド・メイラン氏が来日。およそ30名のゲストを前に、H.モーザーの足跡、製品ラインナップ、2015年のバーゼルワールドで発表された最新作、そして、これからのH.モーザーの展望などについて、熱弁をふるった。
「今日はたくさんの方にお集まりいただき、本当にありがとうございます。私はH.モーザーのスタッフとして、初めて名古屋に参りましたが、皆さんに会えてとても嬉しく思います。
今日は皆さんに三つのことを伝えたいと思います。ひとつは、H.モーザーが“ベリー・レア(極めて稀少)”と言っていることの意味。次に我々が目指している方向性。そして最後に、私が参加してから3年間、H.モーザーがやってきたことです。
まず“ベリー・レア”という言葉ですが、これは我々が、スイスのシャフハウゼンに本拠地を置き、年間約1000本しか生産しない従業員50人ほどの、とても小さなファミリー・ビジネスの会社ということを意味しています。
私は、“複雑時計の揺りかご”と呼ばれ、高級で複雑な時計作りが盛んなスイスのヴァレ・ド・ジュウ(ジュウ渓谷)に生まれました。そのため“なぜ、あなたはH.モーザーに参加し、時計会社がほとんど存在しないシャフハウゼンに本拠地を置くのか?”と、多くの人から質問を受けます。その答は“H.モーザーのようなブランドは他にないから”です。
また我々は“起業家(アントレプレナー)”をひとつのテーマとしています。それは創業者であるハインリッヒ・モーザーが優れた起業家であり、我々自身もまた起業家だから。
そして我々はマニュファクチュールです。つまり、ほとんどの部品を自社で製造しています。
現在、多くのブランドがマニュファクチュールを謳っていますが、実際に自社で生産している会社は、そう多くはありません。
しかも我々は自社で独創性の高いムーブメントを作り、それぞれのムーブメントとケースやダイアルなどの組み立ては、すべてシャフハウゼンの自社工場で行っています。
さらに我々は、自社でひげぜんまいと脱進機を製造できる極めて珍しいブランドです。
これらの部品の品質の高さは、他の大手ブランドへ供給されていることからも証明されています。
現在、H.モーザーには3つのコレクションがあり、8つの自社製キャリバーが搭載されています。その特徴は、“高品質な部品”、“時計師による個々の部品の調整を省き、組み立て精度を向上させる”、“組み立て時間の短縮”といった点にあります。
我々は新開発の時計には、その設計に即した新たなキャリバーを開発しています。
共通する特徴は、大型で3日間のパワーリザーブを持ち、巻き上げ残量を示すパワーリザーブ・インジケーターを装備していることです。
当然ですが自社製のヒゲゼンマイが搭載されています。これもH.モーザーの特徴です。
つまり、H.モーザーとは、起業家であるハインリッヒ・モーザーが築いた長い歴史と素晴らしい遺産に、伝統的な時計製造の技術にセクシーさと優雅さを加えた現代の高級時計マニュファクチュールです。
そして我々は、伝統的な時計製造技術に現代なエッジを加えた製品を作っています。その理念はケースの細部やダイアル、ムーブメントに反映され、時計を構成するすべての要素(ケース、ダイアル、ムーブメント、ストラップ等)が、すべて一体となって融合しています。それが我々の哲学です。
将来も、すべてのムーブメントをモーザーは自社で生産し続けます。そして、すべてのムーブメントは伝統的な時計製造技術をリスペクトするものであり、時計の設計に合わせて開発されたものであることが大切だと考えています」(エドゥアルド・メイラン談)
この後、メイラン氏から、2015年のバーゼルワールドで発表された新作が紹介された。
また当日は、東京から駆けつけた時計ジャーナリストの広田雅将氏が、H.モーザーのメカニズムの特色や魅力について解説。
プレゼンテーションの後は、会場内に展示された2015年のバーゼルワールドで発表された最新作を含む、H.モーザーのラインナップを実際に手にとりながら、メイラン氏や広田氏がゲストたちとの歓談の時間が設けられ、和気藹々の雰囲気のうちにイベントは無事に終了した。
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プレゼンテーション終了後、展示された製品を手に取りながら、H.モーザー本社スタッフでエリアマネージャーのニコラス・ホフマン氏から直接、説明を受ける時間が設けられた。
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イベントは、まず『時計・宝飾 ヒラノ』の平野孝明氏の挨拶からスタート。同店は、尾張徳川氏の隠居所として知られる『徳川園』に近い閑静な住宅街にある、ギャラリーのような瀟洒なたたずまいの時計専門店。熱心な時計愛好家に支持される名古屋の名店である。
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時計ジャーナリストの広田雅将氏によるH.モーザーのメカニズムについての解説。集まったゲストたちは熱心に耳を傾けていた。
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スイスから来日したH.モーザーCEOのエドゥアルド・メイラン(Edouard Meylan)氏。1976年、スイス・ジュウ渓谷生まれ。メイラン家はスイス時計史にその名を残すジュウ渓谷の名門。そのメイラン家によって2006年に設立された『MELBホールディングス』が、2012年にH.モーザーを傘下におさめ、エドゥアルド氏がCEOに就任した。
取材・文:名畑政治 / Report & Text:Masaharu Nabata
写真:安田志保 / Photo:Shiho Yasuda
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