Swiss Watch Confidential Vol.22 有望なのは欧米市場
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「バーゼルワールド」でタグ・ホイヤーは、IT産業をリードするインテル、グーグルと提携して独自のスマートウォッチを開発するとアナウンス。スイスがアメリカと結び付き、新たな欧米市場の拡大を目指しているかのようだ。
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先行きが不透明になってきたアジア市場に対して、有望視されているのがアメリカ市場だという。市場占有率が大きく、スイス高級時計を愛用する著名人や富裕層も少なくないアメリカが輸出低迷を救う切り札になるかもしれない。
7月の統計に限っていえば、日本は幸い1.9%減とわずかな減少幅に留まっているが、アジア市場は軒並み下落。最重要市場の香港では28.7%減、中国は39.6%減という驚くほどのマイナスだ。アラブ首長国連邦は29.8%減、韓国19.7%減とこれまた良くない。
しかし、欧米に目を転じれば、好材料が揃っている。市場占有率11%のアメリカ合衆国は4.7%増、次いで市場占有率8%のフランスが53.4%増と伸びを示している。フランスのこの7月の二桁増は、何が原因なのかわからないが、それにしても驚くほど高い数字である。時計好きのドイツは、市場占有率6.1%で2.3%増という結果だから、まずまずといえる。とはいえ、これらがアジア向けの大幅な輸出減を補うほどではないのも事実だ。
補足として、2015年1月~6月期の輸出統計をあげておく。2014年 の同期と比較しての増減は、金額ベースで香港19.5%減、アメリカ合衆国4.2%増、中国5.3%増、日本6.9%減、ドイツ1.4%増、フランス8.3%増、イギリス28.5%増といったところ。これまであげた7月のみの数字とは差異があるが、少なくともそこから読み取れるのは、香港の下降線、中国の急落、日本の回復、欧米の上昇といった傾向だ。アジアの市場拡大に大きな期待をかけてきたスイス時計産業だが、今やその低迷をいかに乗り切るかが課題。今後の動向を注意深く見てゆく必要があるだろう。
以上は、あくまでもスイス時計協会の輸出統計に基づいてマクロ的に概観したものである。時計グループや個々のブランドの実績を必ずしも映し出すものではないことはひと言断っておく。
構成・文:菅原 茂 / Composition&Text:Shigeru Sugawara
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