CHRONOSWISSアフター・コロナの時代を見据えたクロノスイスの戦略と注目の新作 02

　では、2022年イチオシの新作を教えてください。

「まずはこの『オープンギア レセック カメレオン』です。このダイアルのギョーシェ模様はCVD（Chemical Vapor Deposition）加工によるもので、角度によってディープグリーンからライトグリーンに変化します。このコレクションでは2年前にブルーのバージョンをリリースしました。この時はガルバニック処理で強いブルーを出しましたが、その後、私は技術者と相談し、光の反射によって色が変化する、この仕上げに変更したのです」

　今日、エブシュタインさんが腕に着けている時計も新作ですね？

「ええ。次に紹介したのはこの『スペースタイマー ジュピター』です。これは非常に複雑で多彩な仕上げをダイアルに施しています。まず、木星の写真を撮り、それに従ってレーザーでダイアルに模様を刻みます。さらに3Dプリンターで凹凸を表現し、木星の表面のイメージを立体的に造形しました。ダイアルの下部にはムーンフェイズがあり、月はチタン製のボールで、これをスーパールミノバのハンドペイントで仕上げました。

　また、時と日付の目盛りを印字した透明のリングは新素材のITR-2です。サファイアクリスタルは穴開けが難しいので、この新素材を用いました。この複雑で立体的な仕様により、60個もの部品がひとつのダイアルに使用されています。もちろん、すべての部品は手でセットされています。これが『スペースタイマー ジュピター』の個性ですね」

　ところで2023年はクロノスイスが創業して40周年ですが、何か記念モデルは用意されていますか？

「はい。実は我々にとって伝説のモデルである『デルフィス』の復活を考えています。それがひとつのアイデアです。このモデルに関しては素材も含めて検討中です。

　ダイアルはギョーシェ仕上げ、あるいはエナメル仕上げにして、ケースはラウンドまたは違うシェイプなど、いろいろと検討しています」

　なんと1996年に発表され、製品化に1年を要して1997年に発売された伝説のジャンピングアワー・モデル「デルフィス」が創業40周年記念で復活するとは！　これは世界の時計愛好家にとって嬉しく興味深いニュースである。

「ただ、この記念モデルについては、我々のアトリエのギョーシェ技術が非常に高いレベルにあるので、それを生かしたものにしたいと思っています。

　このように私は自社の製作チームを非常に誇りに思っていますから、2023年もその技術を生かした新製品を発表していきます。

　実は先日、新しいギョーシェのマシンを購入しました。いや、新しいといっても95年ほど前のヴィンテージですが。すでに円形に彫刻するローズエンジンや垂直に彫るストレートエンジンなど、何台ものギョーシェ・マシンを所有していますが、またひとつマシンを増やしたのです。

　こういったヴィンテージなマシンを入手するのは今や簡単ではありません。しかも、そのままでは使えませんから部品を作製し修理して使えるようにします。それが来週、アトリエに届きますから、今は、そのことで非常に興奮しているんですよ！」