NORQAIN時計界の巨人ジャン-クロード・ビバー氏、新進ブランド「ノルケイン」経営顧問に就任!" 02
ベン・カッファーCEOが語る
J-C.ビバー氏顧問就任の背景
2022年6月8日に情報公開されたJ-C.ビバー氏のノルケイン取締役会顧問への就任。その背景を直接、うかがうべくスイスと日本をネットで繋ぎ、ノルケインCEOベン・カッファー氏へのインタビューを行った。
そもそもカッファーさんがJ-C.ビバー氏と最初に出会ったのはいつ、どんなシチュエーションだったのですか?
「私が最初にビバーさんに会ったのは2020年4月。スイスがコヴィッド(新型コロナ感染症)・クライシスによるロックダウンの最中でした。きっかけは、私とビバーさんの共通の友人が『君は絶対にビバーさんに会うべきだ』だというので、彼のセッティングでビバーさんと最初のミーティングを持ったのです」
そのミーティングがきっかけ?
「まずは彼がノルケインに興味を持ってくれたので、スイスにおいて新しい時計会社を設立するに至った我々の情熱や、その価値について説明しました。そして、販売がスタートしてから2年もたっていませんが、すでに世界中のリテーラー(小売り店)と取引を始めていて、ムーブメント・メーカーのケニッシ社とのコラボレーションも始めていたこと、会社全体が若くてダイナミックなこと、新しいコレクションを展開し、それが多くの顧客から支持を得ていること、などをお話しました。
するとビバーさんは、2年でそこまでブランドが完成されていることに共感してくれたのです。しかし、彼はこうもいいました。『すでにキチンとしたベースはできているが、次のステップに向かうには、そのベースを破壊しつつ新しいものを作り上げること。つまりリコンストラクション(再構築)が必要だ』と。
私はそれを聞き大いに共感したので、『それなら私は、あなたと一緒に、その再構築を行いたい』と伝えました。それをビバーさんが受け入れてくれたということです。すでに述べたようにノルケインはまだ若いチームですが、そこにビバーさんのような人がメンター(指導者)として参加してくれることは非常に嬉しいことです」
すでにビバー氏のアドバイスは
次の新作に反映されている!
具体的にビバーさんの役割とは?
「簡単にいえばアドバイザーです。すべての大きな決断について、彼の経験に基づくアドバイスをもらうことが必要です。我々は2021年12月、ツェルマットに最初のブティックをオープンし、近々、第2号店をシンガポールに開きますが、そういったブティック展開やマーケティング戦略をはじめビバーさんにアドバイスをいただきます。そして、もっとも重要なのは製品開発について彼の意見を聞くこと。実はすでに我々はビバーさんの意見を製品開発に生かしています」
これまでビバーさんは時計界でいくつもの改革を行ってきましたが、これをカッファーさんはどうお考えですか?
「ブランパンもウブロも、ビバーさんはブランドの持ち味をシェイプすることで新しく生まれ変わらせる力が非常に強いと感じます。ノルケインは創業から現在まで、企業としての基盤を築いてきましたが、今後は今年9月に発表予定の新作も含め、次のステップに向けてビバーさんと共に新しいブランドの形を練り上げていきます」
9月発表予定の新作について教えていただけることは?
「その新作はビバーさんの意見を取り入れてゼロから開発をスタートしました。このモデルにノルケインの核となる価値を盛り込むことを目指し、コンセプト作りからはじまって、具体的なディテールについても議論を重ねました」
ビバーさんの意見はどう反映されたのですか?
「この開発ではサプライヤーの選定に始まり、素材についても新たに開発しました。そこにビバーさんの意見が反映されています」
素材まで新たに開発されたのですか?
「ええ。時計の外装デザインだけでなく、ノルケイン独自素材の開発はもちろん、コンセプト作りから再構築することが非常に重要であり、その過程をデザインに落とし込んでいったわけですね」
ブランドの再構築を目指し
推進力をブーストしたノルケイン
ビバーさんはすでに70歳を越えていますが、年の差を感じたことはありますか?
「一切、ありません。彼は決して年寄りではありませんよ。とても精神が若く、行動は素早くダイナミック。そして常に情熱的。これはノルケインの精神ともマッチします。年齢ギャップなんて感じたことはありません」
現在、ビバーさんはご自身のブランドで時計の開発を進めているそうですが?
「はい。彼は新しい時計ブランドを準備していて、それは彼のファミリーの夢であり、息子さんのピエールと一緒にその事業を始める予定です。ただ、それはノルケインとは価格帯がまったく違い、彼の時計は超高価格帯のモデルです。
ただ、ノルケインはデジタルを中心にマーケティングを進めてきましたから、その分野でのノウハウを共有することはあるかもしれません」
カッファーさん自身、ビバーさんが手がけた時計をお持ちですか?
「もちろん! オメガのスピードマスター、ウブロ/ビック・バンの初期モデルなどを持っています。特にウブロはビバーさん本人とリンクしていると感じますね。そしてビバーさんがウブロでやり遂げたことは、ノルケインの先例です。ビバーさんは、いわばウブロをゼロから作り上げたといっても過言ではありません。ノルケインもあらためてゼロからブランドを再構築していくうえでの参考になります」
この2年間、あらゆる物事が新型コロナの影響を受けましたが、ノルケインにとっては、どんな期間だったのでしょうか?
「この2年、厳しい状況したが、2021年は売り上げを50%拡大し、2022年は200%の拡大を目指しています。さらに新しいスタッフを雇用しチームを構築しました。なによりもビバーさんと出会い、彼と議論することが新作開発につながり、将来を展望できたことが、なによりの収穫です。
大きな組織では、方向を転換するのにも多大な労力と時間がかかりますが、ノルケインは小さな組織なので簡単に素早くできます。その特性を活用できたと考えています」
伝説のカリスマであり時計界の巨人J-C.ビバーという新たなパートナーを得て、ブランドの推進力をブーストしたノルケイン。月並みな言葉で恐縮だが、私はその動向から目を離すことはできない。
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