Swiss Watch Confidential Vol.24 華やかな展示会に背後で苦戦を続けるスイス時計産業
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スイス時計ブランドだけでも200社以上が出展し、数千あるいは万単位とも言われる新作を発表するバーゼルワールド。輸出低迷を乗り切る次なる一手はどこにあるだろうか。
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大規模な改装によって、メッセ会場がすっかり生まれ変わった2013年は、輸出も最高潮に達していたが、ここ3年で状況は変わりつつあり、戦略の見直しが迫られている。
今年のバーゼルワールドは、主催者発表の最終プレスリリースによれば、8日間会期中の総来場者数は、2015年を若干下回る約14万5000人。2015年の総輸出額は前年比で3.3%減少という現状に対しては「わずかな落ち込み」ととらえてさほど問題にせず、総じてまずまずの盛況だったという見方を示している。広い会場を行き交う大勢の人々や華やかにショーアップされた各社のブースを見る限り、例年と変わらぬ活気が感じ取られ、このところしきりに話題にのぼる「危機」が潜んでいるとは、にわかに信じがたいものがあった。
実情はどうか? 現地メディアがブランドCEOにおこなった広範なアンケート調査(「europa star」掲載記事)や、海外の時計サイトなどが伝えているように、スイス時計産業はいま苦戦を強いられているのだ。スイス時計協会が発表する統計も、厳しい現実を浮き彫りにする。2015年は毎月にように輸出が減り続け、スイス時計産業に危機感が広がった年だったが、状況は依然として楽観を許さない。
今年に入っても好転の兆しが見えない。統計によると、2016年3月は、2015年4月と比較して1年で16%も輸出額が減り、この月の達成額は15億スイスフランどまり。あくまでも仮定の話として計算するならば、15億スイスフランを底とみて単純に12か月をかけたとしも年額で180億スイスフラン。2014年に比べて3.3%減少した2015年の総輸出額215億2000万スイスフラン(約2兆5000億円)にははるか及ばないことになる。
こうした輸出後退の原因について、時計ブランドの関係者やジャーナリストたちがさまざまな見解を述べている。そのいくつかをあげると、スイスフラン高、香港や中国への輸出激減、過剰もしくは滞留在庫の蔓延、中東の原油価格下落、世界的な政治経済の不安定による消費者マインドの冷え込みなどだ。どれも直接あるいは間接的にビジネスに影響するから、これまでの戦略を見直し、2016年は危機を克服する年にしなければならないと、彼らは昨年からすでに考えていたと思われる。バーゼルワールドで発表された新製品にも、消費者の需要喚起を促す次なる一手が見て取れる。読み解くキーワードはまさに戦略的な価格と高品質の両立だ。
構成・文:菅原 茂 / Composition&Text:Shigeru Sugawara
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