Grand Seiko × AJHH「人生の節目に、腕時計を」グランドセイコーフェア 2020年2月1日～3月31日

誕生日と同じ日なら、結婚記念日を忘れないね。
妻が結婚前に言っていたその言葉を、今頃の季節になると思い出す。
明日の妻の誕生日は、僕たちの二十回目の結婚記念日でもある。
今年のプレゼントは何にしようか、と毎年悩めるのはとても幸せなことなんだなと思う。
買ったばかりの新しい時計が僕の手元で時を刻んでいる。
美しくラッピングされた箱の中では、妻のために選んだ新しい腕時計が、同じ時を刻んでいる。
おめでとう。そして、二十年分の幸せな時間をありがとう。
少し恥ずかしいけれど、明日はそう言おうと思う。
妻はこの時計を手にしてどんな顔をするだろうか。

君が生まれてきてくれて、パパは本当に嬉しかったんだよ。
仕事先から慌てて駆けつけた病室で、ママの腕の中で眠る君の顔を初めて見たとき、パパは涙を抑えられなかったんだ。
あの涙はなんだったんだろう。
父親になった喜びの涙なのか、ママへの感謝の気持ちだったのか。
それとも、小さな生命の誕生と、その尊さに感動したのか。
多分、それら全ての想いがひとつになった涙だったんだろうね。
パパは、そのときの感動と嬉しさを、いつまでも忘れないために腕時計を買ったんだ。
この時計がこれから刻む幾千もの時間は、ママと君との、宝物のような時間になるね。
生まれてきてくれて、ありがとう。

出張先へと向かう飛行機の中で、新しい腕時計が刻む時を確かめながら、家族の顔を思い出していた。
先日、私は海外企画部の部長に昇進した。
時計もワンステージアップしてみたら、と前から欲しいと思っていた腕時計を、昇進祝いに妻がプレゼントしてくれた。
「いつもお仕事頑張ってくれてありがとう」と娘からの手紙も添えられていた。
私は一人で頑張ってきたのではない。
妻や娘が支えてきてくれたからこそ、今の自分があるのだと思う。
部長として降り立ったロンドンは、以前見た景色とは違って見えた。
帰国した次の休みの日には、家族と久しぶりに遊びに出掛けよう。

「大樹」という名は、父がつけてくれたらしい。
空まで届くかのような大きな樹のように、大地にしっかりと根を張り、豊かな枝を広げ、大切な家族を守れる男になってほしい。
まだ言葉も分からぬ幼き私を膝の上に乗せ、父がいつもそう話しかけていたと、母から聞いたのは最近のことだ。
厳格な父だった。
そんな父を、私は歳を重ねるごとに遠ざけていった。
こうしてまた笑って語り合えるようになったのは、私が家族を持ってからだ。
初孫を嬉しそうに抱きかかえる父の手元で、還暦を迎えた誕生日に贈った腕時計が、夏の陽の光を受け、輝いている。
その瞬きを遠くから眺めていると、なんだか父に褒められているような気がした。

「結納返しの腕時計、父さんが一緒に選んであげるよ。」
そう提案してきた父が、いつもより明るく振る舞っているかのように見えたのは、気のせいではないと思う。
結納の日取りが決まった昨夜遅く、父が書斎で昔の家族写真を見ながら、一人泣いていたことを私は知っているからだ。
「この機械式時計、重厚感があっていいな。
こっちのダイバーズウオッチも良さそうだね。
それとも、そのクロノグラフはどうだろう？」
「お父さん、自分が欲しい時計を選んでいない？」
私がそう言うと、父は「そうかもね」と目を細めて笑った。
その笑顔は、彼が笑った顔とそっくりだった。
父と似た優しい人を私は選んだみたいだ。

ネイルサロンに来るのはいつ以来だろう。
指先が華やかに彩られ、光を帯びていく。
その輝きに重なるかのように腕時計に美しくレイアウトされたダイヤがきらめいている。
次女の就職が決まり、子育てを卒業した記念にと、自分へのご褒美として時計を購入した。
子供たちが独立し、親離れしてしまうのは少し寂しい気もするけど、これからは自分の時間も大切に生きていきたい。
これが第二の人生のはじまりというものなのかな。
明日からの旅行は、気心の知れた旧友たちと一緒に。
このエレガントな時計に似合う服を着て、新たな気分で旅立とうと思っている。