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CARL F. BUCHERERルツェルンの気質が時計を磨いた

ルツェルンの気質が時計を磨いた

ルツェルン湖から街並みを眺める。

ルツェルン湖から街並みを眺める。

  時計が生み出されて以降、その製造技術と文化を牽引してきたのは、ヨーロッパの大国フランスであった。そのため時計文化の中心がスイスに移ってからも、力を持っているのはフランス語圏に位置するジュネーブ勢であり、作る時計には洒脱な雰囲気がある。“パリの華やかさ”が、奥底に眠っているのだ。


  一方、ドイツ語圏に位置する時計ブランドには、ドイツ気質ともいうべき質実剛健さがある。「カール F. ブヘラ」はその代表例である。


「カール F. ブヘラ」の拠点は、ドイツ語圏の「ルツェルン」にある。チューリッヒから電車で1時間ほど離れたスイス中央部の観光都市で、ヨーロッパ最古の屋根付き木橋「カペル橋」や、ロープウェーや山岳鉄道で山頂まで登れる名峰ピラトゥス(標高2132m)が有名。美しいルツェルン湖と切り立った山々、そして味わいのある古い街並みをコンパクトに楽しめることから、“プチスイス”と称されている。

「カール F. ブヘラ」のルーツは、1888年にルツェルンにて設立された時計宝飾店「ブヘラ」だ。ルツェルン湖の前に本店を構える名店だが、前述したとおり、時計業界ではジュネーブ派が力を持っており、ドイツ語圏の時計店に対しては、納品をコントロールするなど冷遇していた。売る時計がなければ、商売は成り立たない。そこで彼らはオリジナルウォッチの製造を決意する。


  “時計店のオリジナルウォッチ”だからと言って侮ることなかれ、ルツェルン人の気質である“反骨心”によってジュネーブ派に匹敵する品質に到達し、時計販売の経験から導き出されたデザインや機構は、完璧に顧客ニーズに合致していた。高精度の証であるクロノメーター認定も取得し、20世紀中頃にはスイス時計業界が総力を結集したクオーツムーブメント開発プロジェクトにも参加。もはや時計店のオリジナルウォッチとは見なされず、純然たる“スイスの良質な時計ブランド”という評価を受けていたのだ。

取材・文:篠田哲生 Report&Text:Tetsuo Shinoda
写真:江藤義典 / Photos:Yoshinori Eto

CARL F. BUCHERER

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