URBAN JÜRGENSENウルバン・ヤーゲンセンCEOペーターセン氏と 本誌編集長によるスペシャル・トークイベント
ウルバン・ヤーゲンセンCEOペーターセン氏と
本誌編集長によるスペシャル・トークイベント
ペーター・バウムベルガー氏の死去によってウルバン・ヤーゲンセンの経営を引き継いだドクター・クロット氏の手から、CEOとして新たな舵取り役を担うことになったのが、デンマーク人であり、携帯電話で知られたノキアのシニア・ヴァイス・プレジデントを務めた実業家ソーレン・ジェンリー・ペーターセン氏。
今回、私(Gressive編集長・名畑)は、伊勢丹新宿店メンズでペーターセン氏とのトークイベントを開催した。その模様をかいつまんで紹介しよう。
イベントは、まずペーターセン氏によるウルバン・ヤーゲンセンのプレゼンテーションからスタート。そこでブランドの概要を紹介したあと、私の質問にペーターセン氏が答えるかたちで対話を開始した。
私がまず知りたかったのは、どのような経緯でペーターセン氏がウルバン・ヤーゲンセンと出会い、CEOとなったか、ということ。
実はペーターセン氏はもともと熱心な時計コレクターであり、ウルバン・ヤーゲンセンとの出会いは、新しいドレスウォッチの購入を検討していたときだったという。デンマークの時計店で偶然、ウルバン・ヤーゲンセンの時計を見つけたペーターセン氏はこの時計に惚れ込み入手。それがきっかけとなってクロット氏と知り合い、ついにはウルバン・ヤーゲンセンのCEO就任につながったという。
「クロット氏がもっとも恐れていたのは、ウルバン・ヤーゲンセンが持つ特許だけが利用され、偉大な歴史が顧みられなくなることでした。彼が求めていたのは、時計製作を継続し、その歴史的な遺産を再構築する意志のある人物だったのです」
そのクロット氏のお眼鏡にかなったのがペーターセン氏だったというわけだ。
ではペーターセン氏は、2014年にウルバン・ヤーゲンセンのCEOとなって以後、どのようなビジョンで時計作りを進めてきたのだろうか?
「ウルバン・ヤーゲンセンは240年以上の歴史を持ち、現在でも最高の品質を持つ時計を手作りする独立した時計ブランドです。 私はこれを受け継ぎ、その事業をさらに確実なものにしていこうと考えています。その実現のため、ブランドの歴史と伝統を多くの人々に知っていただくこと、新しい工房の設立、有能な時計師を見つけ出すこと、コレクションの再構築や新製品の開発など、さまざまな方法で生産の安定とブランドの成長を目指しています」
最高のクオリティを求めて
伝統技法を守り続ける孤高のメゾン
ペーターセン氏が説明するように、ウルバン・ヤーゲンセンは伝統的な技法での時計製造を続けている。ただ、それだけに製造本数はまだまだ少なく、知る人ぞ知るブランドといったポジションに甘んじている。
だが、これだけのクオリティと美観を備えた時計は、そう簡単に生み出せるものではなく、その価値をより多くの人に知ってもらうことが、ブランド、そして現在のCEOであるペーターセン氏の責務だと、私も考えている。
「ウルバン・ヤーゲンセンの時計は、非常に高品質で、メインのコレクションのムーブメントは自社開発によるものであり、針やダイアル、ケースなどの主要パーツは自社工房でひとつひとつ手作りされています。ただし、すべてを自社で作るわけではなく、ある部品については、専門のサプライヤーに依頼して、最高品質のものをそろえるよう努力しています」
常に最高のクオリティを求め、古典的・伝統的な技法を守って時計作りを進めてきたウルバン・ヤーゲンセンであったが、ペーターセン氏がCEOに就任して2年が経過した2016年のバーゼルワールドで、新たなコレクションが発表された。それが「ジュール・コレクション(Jules Collection)」である。
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名畑政治 / Masaharu Nabata
1959年、東京生まれ。1980年代半ばからライターとして活動を開始し、アウトドア誌やモノ情報誌、メンズ誌等で取材・執筆。1990年代に入ると時計に主軸を置き、1994年にスイス現地取材を開始。以後、毎年春の二大時計展示会の取材を欠かさず継続している。2009年、Gressive副編集となり、2015年に編集長就任。 -
ソーレン・ジェンリー・ペーターセン / Soren Jenry Petersen
1989年、フィリップス・ラジオ・コミュニケーションズ・システムズ入社。プロダクト部門の責任者となり、1994年に同部門がノキアに買収されるに伴い転職。2011年の退社まで製造部門やマーケティング部門などの要職を歴任。その後、経営コンサルタントとして独立。2014年11月、ウルバン・ヤーゲンセンCEOに就任。
ジュネーブ時計グランプリでも絶賛された
2016年に始まるコレクションの新展開
「このコレクションには、ふたつの大きな特徴があります。ずひとつは、ギョーシェと並ぶ、もうひとつの伝統的なダイアル製作技法が採用されていることです。それは現在、非常に希少な“グレナージュ(Grenage)”というもので、個性的なダイアルを製作するためには独特なプロセスが必要で、簡単に真似できるものではありません。
そしてもうひとつが、我々のシンボルであるティアドロップ型ではない、よりモダンでシンプルなテーパー・スタイルのラグが採用されていることです。このラグは古典的なスタイルと融合され、我々の伝統への敬意と、新たな時代の創造への意志を反映しています」
これらの特徴を備えた「ジュール・コレクション(Jules Collection)」では、同コレクションのひとつであるムーンフェイズ装備の「Ref.2340」が、2016年のジュネーブ時計グランプリ紳士時計部門にノミネートされている。
このようなウルバン・ヤーゲンセンの躍進の背景に、ペーターセン氏の努力があることは間違いない。聞けば、デンマーク人であるペーターセン氏だが、ウルバン・ヤーゲンセンのCEO就任にあたり、家族と共にスイス・ビエンヌに転居したという。これだけでも氏の並々ならぬ決意を知ることができる。
しかも現在、ウルバン・ヤーゲンセンはビエンヌで4階建ての伝統的なヴィラを改装して、新たな工房を建設中だという。果たして2017年3月のバーゼルワールドで、その新工房のニュースを得ることができるのだろうか?
これは私にとっても非常な楽しみであり、新たな展開があれば、必ずGressive誌上で皆さんにお知らせしたいと考えている。
取材・文:名畑政治 / Report&Text:Masaharu Nabata
協力:レ・ザルティザン / Special thanks to:Les Artisans
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有限会社レ・ザルティザン
〒170-0005 東京都豊島区南大塚2-3-20-105
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